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stranger

Posted by sugisugi on 18.12.28 16:41

stranger
  作  杉 内 浩 幸
   
       
登場人物
葉子  (高2)
小百合 (高2)
静江  (高2)
祐実  (高2)
慎太郎 (高2)

とき   初春のある一日
ところ  高等学校の校舎の屋上に通じる階段の踊り場にある倉庫。(演劇部の部室)
 
 かつて演劇部の部室があった高等学校の校舎に向かう葉子。

 静かに幕が上がると、誰もいない部室に、小さな窓からゆっくりと陽が射し込み、少しずつ部屋の様子がわかってくる。部屋にはくたびれた衣装や使い古された小道具類が散乱し、壊れた机や椅子、小さなホワイトボードなどが、所狭しと置いてある。

 小百合が入って来て、徐にストレッチを始める。

 そこに、ヘッドホンをして、スマホをガンガン音漏れさせながら、片手にパンを持った祐実が入って来る。
 
 祐実、踊りながらジャージを履きながら、パンを齧る。

小百合  どれか一つにしなさいよ!
祐実   ?
小百合  どれか一つにしなさいっつうの!
祐実   ??
小百合  どれか一つにしなさーい!!
祐実   まじ、やば、鼓膜破れっぺっこの!
小百合  鼓膜破れっぺっこの・・・って、朝から訛ってんじゃねえ!
祐実   このパンうまいしねー
小百合  聞いてないから。
祐実   この曲最高だしねー
小百合  聞こえてないから。
祐実   朝練だしねー
小百合  やってないでしょっ!
祐実   私にとっては、どれも大事、とても一つに絞ることなんか、できないわ。
小百合  バカ。
祐実   バカって言うな、バカ。
小百合  あっほ。
祐実   このパンうまいしねー
小百合  ほんと? 
祐実   ただじゃねえ・・・
小百合  英語の課題やってないでしょ、祐実ちゃん。
祐実   オホ、すべてお見通しね。はい。
小百合  準備いいこと。
祐実   予定通り。
小百合  あんた、白紙じゃない。
祐実   もち。
小百合  サイテー・・・どういう意味?
祐実   お願い。
小百合  しょうがないね・・・(プリントを出す)・・・白紙。

      思わず顔を見合わせて、ハイタッチする二人。

小百合  歌の歌詞って、訳すの難しいよね。
祐実   んだね。
小百合  シンタにやらせようよ。
祐実   ・・・んだね。
小百合  さ、朝練朝練・・・・・・ちょっと、祐実、朝練でしょ。
祐実   んだね。
小百合  祐実さあ・・・毎朝菓子パンじゃん、太るよ。朝はね、ちゃんとご飯とお味噌汁食べないと。
祐実   うちはね、上三人が男なんで、ぜーんぶ食べられちゃうの・・・あいつら野獣よ。
小百合  え? まじ? 初めて聞いた。
祐実   お兄ちゃん?
小百合  いいえ、祐実のうちに野獣がいるって話。
祐実   バカ、たとえ話に決まってんでしょ。
小百合  要するに。
祐実   はい。
小百合  お兄ちゃんたちのせいで、まともなご飯も食べられないと。
祐実   イエース。
小百合  祐実が起きるともうご飯粒一つ残ってないと。
祐実   イエース!
小百合  つまり寝坊が原因だと。
祐実   ・・・いえーい・・・正解?
小百合  賑やかでいいわね。
祐実   しかもよ、一番上の・・・
小百合  孝君でしょ・・・
祐実   そう・・・子供連れて、泊りに来てんのよ。
小百合  へえー、孝君もう子供いるんだねー、小さい頃遊んでもらったけど・・・いくつ?
祐実   ゆうた君・・・小学3年生。
小百合  そっか、小学生はもう春休みか。
祐実   もう、うるさくてうるさくて、この通り、課題なんてやれるはずがない訳。
小百合  つまりそれを言いたかったわけ?
祐実   そ。
小百合  ずいぶん長い言い訳だこと。
祐実   小百合ならわかってくれると思って。
小百合  ながーい付き合いだもんね。
祐実   小中高と十二年・・・あ、幼稚園も一緒だ。
小百合  まさに腐れ縁。
祐実   んだね。
小百合  祐実が羨ましいよ・・・賑やかでさあ。  
祐実   家族多いのも考えもんよ。特に男はね、クサイ。靴下の臭い、年中嗅いでる感じ・・・
小百合  それ言い過ぎでしょ。
祐実   うち来る?
小百合  オエ・・・やっぱりいい。さあさあ、練習練習・・・寒いよね・・・身体あっためないと。
祐実   さあ、英語英語。
小百合  イングリッシュ! ビリージョエル! Do you understand?
祐実   ベリージョーダン、オーイエーイ!
小百合  ベリーじゃなくて、ビリーだから。
祐実   ヘイ、ビリージョーダン!!
小百合  ジョーダンじゃなくてジョエルだから。
祐実   ヘイ・・・
静江   うるさいっ!

 静江入って来る。

小百合  おはよう・・・
静江   あのさあ、朝練やめない?
小百合  朝のうちに体ほぐしとけば、放課後楽でしょ。
静江   そういうことじゃなく、来週テストあるでしょ、山田先生の英語のテスト。(勉強を始める)
祐実  ドへ(突っ伏す)・・・テスト最悪・・・
小百合  なになに、ドヘ、って。
祐実   ドヘはドヘ。ヘドの反対。戻したのが、戻って来る感じ。
小百合  おえ・・・汚い!
祐実   ヘド吐くくらいの衝撃・・・ああもう最悪(突っ伏す)
静江   バカ言ってないで、勉強すれば?
祐実   ・・・じゃあさ、静江、英語の課題。
静江   なに?
祐実   見せて。
静江   だめ。
祐実   なぜに。
静江   甘えるんじゃないのよ。
祐実   ケチ・・・ねえ・・・チョーお願い。
静江   ダメ・・・勉強しなさい・・・
祐実   あたしが赤点とったら、春の公演出られないんだかんね。
静江   それ脅し?
祐実   そう。
静江   じゃあ、登場人物一人減らすわ。
祐実   それって、誰が決めるのよ。
静江   あたし、部長の、このあたし。
祐実   小百合ぃ・・・(涙目)
小百合  よしよし・・・静江、ちょっと言い過ぎよ。
静江   そう・・・?

 そこへ、慎太郎、入って来る。

慎太郎  おは・・・
祐実   きゃー、エッチ。
小百合  コマネチ。
慎太郎  からかうのはやめてください。
祐実   見たでしょ。
慎太郎  何をですか?
祐実   私の、恥ずかしいところ。
慎太郎  見てません。
小百合  男はすぐ嘘をつくのよ。
祐実   エッチ!
小百合  シュワッチ。
静江   バッカみたい。
祐実   ねえねえねえねえ・・・慎太郎くぅーん、英語の課題持ってるかなあ・・・
慎太郎  持ってますけど、朝練やらなきゃ。
祐実   朝練禁止って、聞いてないの?
慎太郎  朝練禁止なんですか?
小百合  部長命令よ。
慎太郎  そうなんですか? 静江さん。
静江 山田先生のテストでしょ・・・勉強しなくていいの?
慎太郎  そうでしたね。
祐実   だから、ね、英語の課題・・・ね?
慎太郎  いいですよ・・・一緒にやりましょう。
祐実   えええ? シンタやって来てないの? 珍しいね。
慎太郎  夕べ、母親の誕生日だったんで、兄弟三人で、料理作ったりしてて。そしたら、母親の帰りがあまりに遅くて、結局そのまま寝ちゃって・・・ははは。
祐実   お料理食べないで?
慎太郎  はい。
祐実   シンタって、お母さん思いなのね・・・
慎太郎  そりゃあ、女手一つで男三人ですから・・・さ、やりましょう。
祐実   うん・・・あたし、英語からっきしダメだから。
小百合  英語だけじゃないでしょ。
祐実   オーイエース!
慎太郎  大丈夫ですよ。
祐実   シンタ優しいのね。
慎太郎  ありがとうございます。
祐実   ・・・これ、ホネスティ?
慎太郎  この「H」は読まないんです。
祐実   なんで? 
慎太郎  なんでも。
祐実   オネスティ ・・・
慎太郎  そう・・・オネスティ ・・・意味は、誠実。
祐実   (書きながら)せ、い、じ、つ・・・次・・・テンダネスって?
慎太郎  優しさ。
祐実   トゥルースフルネスって?
慎太郎  真実。
祐実   アントゥルーって?
慎太郎 不誠実。
祐実   ええと・・・
小百合  自分で調べろ!
祐実   デヘ。
静江 あなた読めてるじゃない。
祐実 昨日のうちにふりがなふってもらった。
静江   誰に?
祐実   先生に決まってんじゃん。
静江 それなのにホネスティなの?
祐実 先生が間違えたと思ってた。
静江   まさかでしょ。
慎太郎  祐実さん、まさか、ふりがなふってくれた先生って・・・
祐実   なに?
慎太郎  山田先生じゃないでしょうね。
祐実   さあね・・・
慎太郎  ちょっと・・・
静江   なんだっていいじゃない、どうしてあなたがムキになるわけ?
慎太郎  尊敬する山田先生がそんなことするわけありませんから。
静江   あっそう、山田先生「愛」ね・・・
慎太郎  そういう言い方はしないください。
静江   わかったわかった、シンタ、次、次・・・
慎太郎  あ、はい、ええと、ここがサビです・・・祐実さん、いいですか?
祐実   いよいよホネスティの登場ね。
慎太郎  (ちょっと怒った感じで)オネスティ です。
祐実   いいの・・・誠実がロンリーって、なに?
静江   あたしは「真心」って訳したけど。
祐実   真心がロンリーって、なに?
慎太郎  ここは、寂しいとか虚しい言葉って意味じゃないですかね。
祐実   真心が寂しいって、なに?
慎太郎  その、つまり・・・
小百合  そこは「正直」でいいんじゃね?
静江   正直?
小百合  「正直って言葉は寂しい言葉。だってみんな嘘つきだから。僕は君に正直さを求めてるんだ・・・」的な・・・
祐実   さすが小百合ね。
慎太郎  なるほど、それだとしっくりきますね。
静江   シンタ!
慎太郎  はい?
静江   ここの訳はどう? 見て。
慎太郎  あ・・・はい。

  慎太郎と静江が仲良さそうに話をする。

祐実   何よ(落ち込む)・・・ちょっと、あたしにも見せてよお!

  次第に除け者にされて行く祐実。拗ねる祐実。
  小百合、祐実を無視して、ストレッチを再開する。そして、発声を始める。
  
静江   朝練禁止って言ったじゃない、静かにして。
小百合  英語の課題どころじゃないんじゃないの? 部長さん。
静江   え? なに?
小百合  春公演の台本、どうすんのよ。

  間

小百合  あれ、あれあれ? あたし、地雷踏んじゃったかも。
静江   あたしの責任で、何とかする。
小百合  部長様は大変ってことよね
静江   そういう言い方やめて。
祐実   葉子、学校来てないよ。
静江   わかってるわよ、そんなこと!
祐実   既成の台本でいいんじゃない?
静江   無責任なこと言わないで、春の公演は創作で行くって、決めたんだから・・・あなたもいたでしょ。
祐実   そんなこと言ったってさあ・・・台本書けるのって、葉子ぐらいじゃん。
静江   だからわかってるって言ってるでしょ。

  小百合、大声で発声を始める。

静江   ちょっと静かにしてよ・・・うるさいうるさい・・・静かにして!

  小百合ますます大きな声で発声する。

静江   外でやってよ。
小百合  そう・・・じゃあ、屋上でやっかなあ・・・
慎太郎  開きませんよ、その扉。
小百合  わかってるよ。
祐実   出たことないね、ここの屋上。
小百合  そうね。

   間

慎太郎  昔、ここから飛び降りた人がいたそうですよ。

 全員、シーンとなる。

静江   そのドア昔は開いてたの?
慎太郎  いえ・・・(窓を見上げる)
小百合  え? あそこ?
静江   あそこから出たの、その人。
慎太郎  だそうです。
小百合  なんで知ってんだよ、そんなこと。
慎太郎  文化祭の後、ここに引っ越したじゃないですか、その時先生に聞きました。
祐実   どうして飛び降りたの。
慎太郎  さすがにそこまでは、教えてくれませんでした。
静江   いじめ?
小百合  ちょっとやめなよ、なんでも結びつけるの。
静江   追い詰められれば、行っちゃうんじゃない、あんな窓でも。
小百合  窓の外って、屋上でしょ?
慎太郎  違いますよ。
小百合  え?
慎太郎  下まで落ちます。
小百合  下って・・・下?
祐実   イヤ! 痛そう・・・
小百合  それ知ってたのかな、その人・・・屋上に逃げようとしたのかもよ・・・
静江   何から?
小百合  つまり、追い詰められて。
静江   何に?
小百合  やっぱ、いじめかなあ。
祐実   かわいそう・・・

  そこへ、葉子がフラリと現れる。

小百合  葉子!
祐実   葉子・・・来たの!?
静江   ・・・
葉子   おはよう、みんな・・・いたのね。
小百合  そりゃいるよ、変なこと言うね・・・朝練だよ。
葉子   ええ・・・
小百合  なんで私服? しかもスーツ。
祐実   格好いい!
小百合  なんかあんのか?
葉子   うん、ちょっと・・・ああそうそう、先生とちょっと話を・・・
小百合  そう・・・
祐実   葉子、なんか急に大人びた感じね。
葉子   そんな・・・
慎太郎  お久しぶりです。
葉子   ええ・・・
静江   葉子。
葉子   静江・・・さん。
静江   静江でいいのよ。
葉子   ごめんなさい・・・
祐実   何かあった?
静江   台本よ。
祐実   あ・・・
静江   私との約束。
葉子   ごめんなさい・・・
祐実   心配したよ、電話にも出ないし、ラインも無視だし、家行っても、会わせてくれないし・・・。
静江   葉子はね、春の公演はあたしに台本書かせてくださいって、懇願したのよ。
祐実   コンガンってなに?
静江   それなのに、休む休む、学校休む。不登校? 不登校って名前つけば、先生も諦めてあんたに優しくなっちゃうんだよ。
小百合  言い過ぎだよ。
祐実   ねえ、コ・ン・ガ・ンって何?
葉子   ごめんなさい・・・
静江   で、書けたの?
小百合  せっかく来たんだから、ほかに言い方あんだろ。
静江   ふん・・・
葉子   書けた・・・だから、今日、来た・・・
小百合  葉子・・・無理しなくていいんだよ、話は聞いてっから。
葉子   お母さん話したのね、あなたのお母さんに。
小百合  ママ友だからね。
葉子   家のことは関係ないから。
静江   ・・・なんなのよ、家のことって。
小百合  葉子は、
葉子   やめて。
小百合  ・・・葉子は、おばあちゃんの介護やらされてんだよ。
慎太郎  やらされてるって、それ、どういうことですか?
葉子   やめて、小百合、その話はここではしないで。
小百合  いいやダメ。お前の名誉のために・・・トイレの時とか、体拭いたりとか、全部葉子がやってんだよな。
葉子   もうやめて・・・
静江   お母さんがいるじゃない。
葉子   ・・・
小百合  葉子。
葉子   お母さんは、おばあちゃんには触りたくないって、それで・・・
静江   ・・・ヘルパー頼むとか、いろいろ方法あるんじゃないの?
葉子   ヘルパーさんって、週に一回くらいしか来てくれないのよ。
静江   ・・・どうして話してくれなかったの?
葉子   言い訳したくなくて。
静江   それでこんなに二ヶ月も三ヶ月も不登校になるもんなの?
小百合  お前言い過ぎだって言ってんだよ。
静江   先生から聞かれたよ・・・部活で何かなかったかって。
葉子   何かって?
静江   あたしたちが葉子に何か言ったんじゃないかって。
葉子   そんなことないです。あたしがいないとおばあちゃんひとりぼっちで。みんな、本当にごめんなさい、これ・・・

 葉子がカバンから、台本を出そうとした時、校内放送が入る。しかし、この場所は、部屋にスピーカーがないため、聞き 取りにくい。「全校生徒に連絡します。直ちに、第二体育館に避難してください。繰り返します。全校生徒は、直ちに第二体育館に避難してください。」(実際はほとんど聞こえていない)

慎太郎  聞こえましたか?
小百合  聞こえないね・・・
祐実   あたし聞いて来る。(出て行く)
慎太郎  僕も行きます!(出て行く)
静江   どうせ、大したこと言ってないよ・・・

  祐実と慎太郎が戻って来る。

小百合  どうした?
祐実   避難だって、第二体育館。
静江   避難? なんで?
祐実   わからない、最後の方しか聞こえなかったから、全校生徒第二体育館へ避難だって。
静江   そうなの?(慎太郎に)
慎太郎  間違いありません。
祐実   変だよね、地震もなかったし。
静江   火事かも・・・逃げましょう。
小百合  非常ベルとか鳴った? 
静江   ここじゃ聞こえないのよ。
小百合  訓練だよ、訓練。
静江   そんなの聞いてない。
小百合  久しぶりに来たのに、災難だな。
葉子   そんな・・・。
静江   ねえ、どうして二体なの?
小百合  確かに。
静江   二体って、全校生徒は入れないんじゃない。
慎太郎  そういえばそうですね。
小百合  祐実、ほんとに二体って言ったのか?
祐実   そう言われると自信ないけど。
慎太郎  聞き間違えたかなあ。
小百合  どうする?
静江   とりあえず逃げましょう。
小百合  どっちに行く?
静江   (少し考えて)両方行ってみればいいんじゃない?
祐実   両方?
小百合  そうか、二手に分かれよう。あたしと祐実で一体。
祐実   あたし、葉子と一緒がいい。
葉子   祐実ちゃん。
小百合  めんどくせえなあ・・・じゃあ、静江とシンタで一体。
慎太郎  はい。
祐実   二人っきりにするの?
小百合  お前どうしたいんだよ、こんな時に。
葉子   祐実ちゃん。
小百合  あーあーあーあーわかった、あたしと静江で一体。葉子と祐実で二体。これでいいだろ・・・
静江   ・・・
慎太郎  ぼ、僕はどうすればいいんですか?
小百合  シンタはここで留守番。
慎太郎  あ、はい。
小百合  携帯出しといて・・・みんなも・・・これならいいだろ?

 慎太郎を残して、四人が部屋を出ていく。

 慎太郎一人になり、急に不安になる。屋上へ通じている扉をガチャガチャさせてみたり、階段下の方へ行ってみたりしているうちに、稽古で使うBluetoothスピーカーを見つけだして、スマホを操作する。ビリージョエルのstrangerがかかる。イントロが終わり、テンポが速くなる部分に入ったあたりで、一体へ行った小百合と静江が帰ってくる。ボリュームを下げる慎太郎。

小百合  お前電話出ろよ・・・何聴いてんのよ。
慎太郎  すみません・・・

  慎太郎慌てて携帯を確認して、そして不思議そうな顔。

慎太郎  着信ありませんよ。
小百合  え?
静江   そんなはずは・・・
慎太郎  あ、なんか僕の携帯ダメみたいです。
静江   ていうか、うちもダメみたい・・・
慎太郎  で、どうだったんです?
小百合  ああ。
静江   それがね。
慎太郎  どうしたんですか?
小百合  んん・・・とね・・・ないの。
慎太郎  へ?
小百合  ないのよ。
慎太郎  何が?
静江   階段が・・・
小百合  つまり、下に降りられない・・・ハハハ・・・
慎太郎  二人とも何を言ってるんですか? 状況がよくわかりません。もう少し詳しく説明してください。
小百合  つまり・・・
静江   よくわからないのよ・・・階段降りようとしたんだけど、ね、小百合・・・ないの。
小百合  つまり一体に行けないの・・・ね、静江。
静江   ・・・
慎太郎  ・・・二体へは行ったんですか? 二階から行けるじゃないですか。
小百合  そうだった・・・忘れてた・・・
静江   気が動転して。
慎太郎  行ってみましょう。そもそも、放送は二体だったんですから。
小百合  そうね・・・
静江   何? この曲。
慎太郎  ストレンジャーです。ビリージョエルの。
静江   ビリージョエルって、あの、山田先生の?
慎太郎  はい。
静江   オネスティ じゃなかったの?
慎太郎  ああ、これは、ストレンジャーって曲なんです。山田先生に教わって、ダウンロードしました。ハマっちゃって。
静江   じゃあ、そのうち課題になるわね。
慎太郎  次はこれだって、言ってました。
静江   やっぱり・・・。止めて・・・うるさい。
慎太郎  あ、すみません・・・(スピーカーのスイッチを切って)じゃあ、行きましょう。
小百合  待って。
慎太郎  何か。
小百合  あの二人、待ったほうがいいんじゃない? 二体へ行った二人。
静江   どうせ行くんだから、行きましょう。
小百合  待とうよ。
静江   わかったわよ。
静江   遅いわね、二人とも。
慎太郎  道間違えてんじゃないんですか?

  その時、葉子と祐実が帰ってくる。蒼ざめた表情。

小百合  どう?

  答えない二人。

静江   どうしたの・・・祐実・・・葉子・・・。
慎太郎  祐実さん、葉子さん。
祐実   ないの・・・っていうか行けないの、っていうか二階に降りられないの、っていうか階段が、ないの・・・ていうか・・・へへへ、どうしちゃったんだろ・・・
小百合  さっき二階行ったよ、どういうこと?
祐実   そんなあ。
慎太郎  一体にも行けなかったそうです。
祐実   どういうことなのよ?
静江   保健室のある方の階段・・・で間違い無いわよね・・・そこから、階段がなかったの。
祐実   反対側も行ってみたよ。でも、やっぱりないの。
小百合  どうなってんだ・・・あり得ない・・・
祐実   ちょっと、何、何が起きたの?
葉子   みんな、ちょっと落ち着きましょう。
祐実   落ち着いてなんかいられないよう。
小百合  変だな、夢でも見てるのか。
慎太郎  僕が行きます。
静江   一人じゃダメ。あたしも行く。
祐実   慎太郎、行こう。
静江   祐実はここにいて。
祐実   どうして。
静江   あなたパニックになるでしょ。
祐実   ・・・・・・
小百合  ・・・ねえ誰か、生徒手帳持ってない?
慎太郎  僕、持ってます。
小百合  貸して。
慎太郎  どうするんですか?
小百合  今更だけど、校舎の見取り図確認しようと思って。
慎太郎  なるほど。
静江   それでどうするの?
小百合  慌ててたから、混乱してたかもしれない。一体は、一階の玄関脇の通路からだろ? それで二体は二階の職員室の脇の通路だよな・・・間違ってないと思うんだけどなあ・・・
祐実   ちょっとお。
小百合  静江、警察に電話して。
静江   命令しないで。
小百合  え?
葉子   静江さん、そんなこと言ってる時じゃないでしょう。
祐実   ・・・もういいよ、あたしが電話する。119番だっけ。
葉子   110番よ。
祐実   ああ、そうだった。
小百合  シンタ・・・他に二階へ行くルートはない?
慎太郎  ええちょっと待ってください。
祐実   かからないよ・・・電波三本立ってるのに。
静江   (思い出したように)緊急SOS、緊急SOSやってみて。
祐実   やってみる・・・・・・ダメ・・・みたい・・・
静江   貸して!
祐実   ちょっと、勝手にいじらないで!
静江   何よ一人じゃ何もできないくせに。
祐実   何・・・
小百合  ちょっと! さっきから・・・/
葉子   こんな時だから、みんなで協力しなきゃ。
静江   わかってる、わかってるよ。
慎太郎  (小百合に)ここはどうでしょう、さっきはこっちから二階へ行こうとしたんですよね。
葉子   そうよ。
慎太郎  この、中央通路から脇に出たところに、非常階段があるんです。ここから3階まで降りて、図書室の方に進んで、左側から、ここにも非常階段があって、下に降りられます。
小百合  よし、行こう。
葉子   危なくない?
小百合  大丈夫だよな、シンタ。
慎太郎  あ、はい・・・あの、相談なんですが、みんなで行くというのはどうでしょう・・・はぐれたりしないように。
小百合  なるほど、そうすっか。
静江   でも、みんなやられちゃったらどうするの?
祐実   何、やられるって?
静江   だから、みんなまとめて、何かあったら、大変じゃない?
小百合  エイリアンとか?
慎太郎  え?
小百合  ほらあったじゃん、どっち逃げても、両側からエイリアンの長い触手が伸びて来て・・・ウワーみたいな・・・
祐実   イヤー!
葉子   小百合さん!
小百合  ごめん・・・

  間

慎太郎  とにかく行きましょう。
小百合  さあ、ついて来て、みんな。
静江   あたしは残る。
小百合  そう、じゃ、留守番頼む。
祐実   自分だけ助かりたいんでしょ。
静江   何それ。
祐実   だって、そうじゃない・・・エイリアンがくるんでしょ・・・
静江   バカみたい・・・あたしは、小百合が仕切るのを見たくないだけ。
小百合  ・・・こんな時にそれを言う?
静江   こういう時だから、よくわかるの・・・あなたが部長になればよかったのよ。
小百合  今そんな話してる時じゃないだろう。
祐実   静江、おかしいよ。
静江   ええええ、あたしはおかしいわよ、好きにすればいのよ、あたしはここにいる、何かあったら、あたしの責任なんだから!
祐実   バッカみたい!
静江   あんたにそんなこと言われたくないんだけど!
小百合  ストップストップストップ、黙って! とにかく状況を把握しないと・・・・・・さあ、行くよ。

   静江を除く四人が出て行く。

   静江がイライラしながら周りを窺っているところへ、葉子だけ戻ってくる。

葉子   静江さん。
静江   その、さん付けで呼ぶのやめてくれない? 同級生なんだからさ。
葉子   すみません。
静江   何で謝るの? 謝るようなことなら、最初からやらなきゃいいじゃない。
葉子   すみま/
静江   あたしはね、あんたのそういうところが嫌いなの、辛気臭くて、いい子ぶってて、そうやってすみませんって言ってれば、みんながあんたをいい子だと思う。あんたの言うことなら、みんなが許す。それが気に食わないのよ。
葉子   ・・・あの・・・
静江   なに。
葉子   台本、読んでください。
静江   ああ・・・
葉子   こんな時だけど・・・
静江   登場人物は、何人?
葉子   五人か六人。六人だと一人足りない。男の子が一人、あとは女子。
静江   ふーん・・・見せて。
葉子   遅くなってごめんなさい。
静江   そう・・・言っとくけど、あなたが書くって言ったんだからね。責任はとってもらうよ・・・「ホーム」?
葉子 うん、学園物は、書けなかった・・・どうしても書きたいことがあって。ごめん・・・
静江   いいけどさ、葉子、どうして私服なの?
葉子   ・・・あたし・・・学校やめるの、って言うか、転校するの。
静江   え? そういう話になってたの?
葉子   うん。
静江   さっきの話だけど、葉子・・・何があったの?
葉子   誰にも言わないって、約束してくれる?
静江   ええ、もちろんよ。
葉子   ・・・臭いって。
静江   え?
葉子   おばあちゃんの下の匂いが取れなくて。それで、臭いって言われて。
静江   教室で?
葉子   うん。
静江   それで?
葉子   行けなくなったの。だから、いじめとかそういんじゃない。自分が行きづらくなっただけ。介護も忙しくなって来たし・・・
静江   そうなのね・・・今日は突然どうしたの?
葉子   みんなに、お別れを言いに来たの、台本のこともあったし・・・
静江   ・・・そうなんだ・・・でも、学校まで辞めることないんじゃない?
葉子   それは・・・家庭の事情かな。
静江   それにしたって/
葉子   /ごめんなさい・・・
静江   (笑って)・・・さみしくなるね・・・
葉子   静江さん・・・ありがとう・・・優しいのね/
静江   /やめてよね、そういうの苦手なの・・・みんなには?
葉子   あとで話す・・・
静江   ・・・どうしてあなただけ戻って来たの?
葉子   静江さんと二人っきりで話したいと思って。
静江   この非常時に、ずいぶん冷静じゃない。

  そこへ、みんなが帰ってくる。

静江   どう?
小百合  (首を横に振る)
静江   そうなの? シンタ。
慎太郎  ないんです・・・降りられないんです、行けないんです・・・
静江   それはさっきと/
慎太郎  /三階にも行けないんです。階段がないんです!
小百合  さっき降りた階段がないんだよ・・・ないんだよ。行けないんだよ・・・
祐実   ねえ、夢よね、これ、夢だよね、ねえ・・・夢だよね。 
静江   ・・・あたしたち閉じ込められたんじゃない?
祐実   そうなの?
小百合  誰に?
静江   それはわからないけど・・・
祐実   どうして、こんなことになっちゃったの? ねえ、おかしいじゃない、ねえ、なんでこんなことになってるの?  どうして誰もいないの? ねえ、なんでなの・・・わー!
葉子   祐実ちゃん! しっかり!
慎太郎  みなさん、ちょっと落ち着いて、考えてみましょう・・・なんでこんなことになったのか、考えてみましょう。
静江   そんなことしてどうすんのよ、とにかく、外に出て逃げるのよ!
小百合  どこへ。
静江   だから。
小百合  静江も見ただろう。
静江   だって今は逃げなきゃ/
小百合  だからどこへ!
慎太郎  落ち着いて、皆さん・・・これからどうすればいいのか考えましょう!
小百合  どうするんだよ。
慎太郎  そうですねえ・・・皆さんは、今朝何かいつもと違ったことはありませんでしたか? 
静江   そんなこと聞いてどうすんの?
慎太郎  原因を考えるんです。
静江   どんな意味があんの? 
慎太郎  学校来る途中、何か異変があったんじゃないかって。
静江   何もなかったわよ。
慎太郎  皆さんは、皆さんはどうでしたか?
小百合  そうだな、犬がいつになく吠えたかな、それくらいだよ。

  慎太郎が、ホワイトボードに、小百合、祐実、静江・・・の順で名前を書く。

祐実   違う、祐実の「み」は、美しいじゃなくて、実るって字。
慎太郎  ああ、すみません。
祐実   安達祐実の「祐実」だよ。
慎太郎  ・・・で、安達祐実さんは、どうでしたか?
祐実   安達じゃないの・・・矢下祐実。
慎太郎  矢下さん。
祐実   祐実でいいよ。
慎太郎  祐実・・・さん、学校へ来るまでの間、何か変わったことは?
祐実   いつもと同じ、歩いて来たけど、別に・・・これしてたから、何も聞こえなかったし・・・前見てないし・・・
慎太郎  次、静江さん・・・話してください・・・静江さん。
静江   いつものように朝ごはんを作って、小さな弟妹たちに食べさせました。お母さんは・・・新しいお母さんだけどね、今単身赴任してるお父さんのところに行ってるので、この一ヶ月はあたしが母親代わりです。ね、あたしって、立派でしょ?
慎太郎  静江さん、すごい・・・惚れ直しました。
静江   キモいっつうの。
葉子   祐実ちゃん。
小百合  まさか・・・
静江   ええ!
葉子   祐実ちゃんはね、慎太郎君のことが好きなんだよ。
小百合  葉子、お前知ってたのか。
葉子   一年生の時、三人同じクラスだから。
小百合  そっか・・・あたしって、鈍感? 幼稚園から一緒なのに。
祐実   葉子のバカ!

  祐実、飛び出していく。追う、葉子。

慎太郎  ちょっと、僕ですか? 僕は何も悪いこと・・・
小百合  この非常時に告ったりしてっからだよ。
慎太郎  そんなあ・・・告った? 違いますよ・・・話の流れで・・・
静江   それ、どういうこと?
慎太郎  すみません。二人を探してきます。
静江   あなたが行ったら、余計ややこしくなるでしょ。
小百合  葉子がいるから大丈夫だよ。
静江   (慎太郎に)バカ。

  祐実と葉子がすぐ戻ってくる。

小百合  祐実。
静江   どうしたの?
祐実   大変よ・・・
小百合  なに?
祐実   ないの・・・
小百合  何が?
祐実   体育館・・・
小百合  それってさっき・・・
祐実   廊下から見えるはずの二体が、ないの・・・

  一斉に四人が顔を見合わせ、外へ出て行く。葉子は残る。やがて、四人が戻ってくる。

小百合  シンタ、続けよう。
慎太郎  そうですね。
慎太郎  じゃあ、小百合さん、さっき犬が吠えたとか言いましたよね、もう少し詳しく話してください。
小百合  うちの犬がいつになくよく吠えるんで、散歩に行ったかな。いつもはお父さんが散歩連れてくんだけど、今朝はたまたま早出だったんで、仕方なくて。
慎太郎  犬ですか。
小百合  あ、地震あったでしょ、何時頃だったかな、地震・・・それでうちの犬が。
静江   あった? 地震・・・大した地震じゃなかったんでしょ。
慎太郎  それだ!!
小百合  びっくりした・・・なんだよいきなり。
静江   何、どうした!
慎太郎  地震ですよ、地震で学校の周りが沈没した・・・あ、いや、校舎が沈没した・・・
静江   じゃあ、なんであたしたち、学校来れた訳?
慎太郎  さあ。
静江   アホか。
慎太郎  ですよね・・・何か起きていることは間違いありません。
小百合  そんなことわかってんだよ。
慎太郎  ですよねー・・・あ!
小百合  なんだよびっくりするじゃねえか。
慎太郎  朝の地震で、少しずつ少しずつ沈没した・・・だから、下の階へ行けなくなった。
静江   一応理屈は通るわね。
小百合  あり得ない。
静江   だって、ありえないことが起きてるじゃない。それをどう説明するの?
小百合  校舎が沈んだって、下には降りられる。それより何より、それだけ大きな地震なら、校舎が崩れてる。ありえない。慎太郎  そうですよね。
小百合  シンタは、お前はどうなんだよ。
慎太郎  改めて言っておきますが、僕はシンタじゃありません、慎太郎です。東京都知事の石原慎太郎からつけてもらった、大切な名前なんですから。簡単に省略しないでください。
小百合  お前の名前、石原慎太郎から取ったのか?
祐実   だれ、それ。
小百合  前の東京都知事で、石原裕次郎のお兄さん。
祐実   石原裕次郎なら知ってる、映画の人。
小百合  いっそのこと、裕次郎にしてもらえばよかったのに。
慎太郎  裕次郎はあまりに有名すぎて、父も遠慮したようです。それに長男だし。
小百合  じゃ、弟は、裕次郎?
慎太郎  いえ、・・・慎次郎です・・・
小百合  ふーん・・・
慎太郎  因みに、下の弟は、慎三郎です・・・
祐実   あたしんとこは、上に三人お兄ちゃんがいるんだよ。
小百合  羨ましいね・・・兄弟多くて。
慎太郎  小百合さんは兄弟いないんですか?
小百合  あたしは一人っ子だよ。
慎太郎  そうですか・・・小百合さんって、吉永小百合の小百合じゃないですか?
小百合  なんで知ってるの?
慎太郎  (ホワイトボードに名前を書きながら)「小百合」ときたら「吉永」でしょ。
小百合  親父がファンだったんだよ。
祐実   へえ、あのお医者のおとうさんが?
慎太郎  小百合さんのお父さん、お医者さんなんですか?
小百合  そうだよ。
祐実   あたし診てもらったことあるんだ、幼稚園の時に。
小百合  親父が研修医の時の看護婦がうちのお母さんで、最初のデートで吉永小百合の映画を見に行ったんだって。
慎太郎  それで、小百合ですか。
小百合  そういうこと・・・安易だよな。
祐実   いいじゃない・・・安達祐実なんかより、ずっといい。

  静江を除く四人が笑う。

静江   (ボソッと)うるせえんだよ・・・

  一瞬静まり返る。

祐実   どうかしたの?
静江   お前たち下らないんだよ・・・さっきから。
小百合  なんて?
静江   下らないって言ったんだよ。
慎太郎  静江さん、ダメです!
静江   ガキのくせに口出しすんなよ。
小百合  静江!
静江   偉そうに何でもかんでも口出しするなよ。この非常時に、お前ら何くっちゃべってんだよ。
慎太郎  すみません・・・僕が悪いんです。
小百合  慎太郎、続けなよ。
慎太郎  え? だって。
小百合  いいから!
静江   くだらないって言ってんじゃない!
小百合  黙れ!
祐実   やめて。
小百合  シンタ、続けろよ。
慎太郎  でも・・・
小百合  続けろって言ってんだよ!
静江 ・・・
慎太郎  ・・・ぼ、僕は、特に変わったことはありませんでした・・・ニュースも見ないし・・・葉子さんは?
葉子   あたしは・・・ちょっとバタバタしてて、あんまり覚えてなくて。
小百合  今朝のことなのに。
葉子   ええ・・・気がついたら、ここに来ててって感じで。
小百合  久しぶりだもんな・・・担任とこには?
葉子   ああ・・・ええ、まだ。
小百合  まっすぐここにくるなんて、律儀だよな。
葉子   授業始まる前にと思って。
静江   ・・・葉子はね・・・転校するの。
葉子   うん・・・
祐実   え? どこ行っちゃうの?
葉子   ちょっと遠いとこ・・・今日は、静江との約束、果たしにきた・・・台本持ってきた。
祐実   ねえ、どうして? どうして辞めちゃうの?
葉子   家庭の事情かな・・・きょうは、みんなに、別れを言いに来た。
小百合  別れって、ちょっと大げさじゃね?
葉子   みんなの分、ここにある。(台本を配る)どうしても読んで欲しい・・・
祐実   あたしの役あるよね。
慎太郎  男は一人だけですか?
小百合  なんかワクワクするな。
祐実 (題名を見て)ホーム?
葉子 うん、家族の話。
祐実   葉子の家族?
葉子   うん。
静江   それ、後にしてくんない?
小百合  まあ、いいじゃないの。
静江   部長はあたしよ。
小百合  そういうことね・・・。はいはい、わかりました・・・部長様、次は何をすればいいですか?
静江   みんな、食べ物出して。
小百合  え? いきなり何?
静江   いいから・・・部長命令よ。
祐実   いいよ・・・はい、パン、パン、パン・・・

  みんながそれぞれ鞄から、弁当やら何やらを出している。

小百合  何しようっての?
静江   あたしたち、閉じ込められたんでしょ。
祐実   そうなの?
小百合  んなわけないだろ、誰がそんなことするのよ。
静江   だって、出られないんでしょ、学校から、あたし達。
慎太郎  それはそうですけど、閉じ込められたとかそういうことでは/
静江   黙ってて。
慎太郎  はい。
静江   外には出られない、電話も繋がらない、このままだったらどうする?
慎太郎  お腹すきますよね・・・なるほど。
静江   そう。
慎太郎  さすが静江さん!
静江   四階に調理室あるじゃない?
慎太郎  そうですね・・・食料調達するんですね?
静江   そう、急ぎましょう・・・何があるかわからないけど。
小百合  鍵かかってんじゃね?
慎太郎  窓割るしかないでしょう。
小百合  なま肉とか、生野菜とかしかないんじゃない?
静江   行ってみなきゃわからないでしょ!
小百合  ガラス割るのに、何か必要だな。
慎太郎  バットがあります。
小百合  よし・・・ヘルメットなかったっけ?
慎太郎  あります、あります・・・なんかワクワクしますね。
小百合  バカ言ってないで。
慎太郎  すみません。
小百合  さあ行こう。
祐実   あたし行かない。
小百合  え?
祐実   怖い。
小百合  じゃあ、祐実は留守番。
静江   勝手に決めないで、部長はあたしよ。
小百合  ・・・
静江   祐実、少しでも人数が多い方がいいの、わかる。
祐実   わかるけど、いや、静江が行けば。
静江   あたしはここで状況を把握して/
祐実   あなたの命令には従わない。
静江   祐実!
祐実   何よ偉そうに!
小百合  祐実はここで葉子と留守番。静江、行くよ、
静江   仕切らないで。
小百合  グダグダグダグダ、いい加減にしないか! さあ、行くよ!
静江   命令しないで・・・何から何まで、勝手にやらないで!
小百合  静江・・・
慎太郎  静江さん・・・
小百合  今は非常時でしょ・・・誰が命令するとか、仕切るとか、今はそんなこと言ってる場合じゃないんじゃない?
静江   ・・・
小百合  今はみんなが力を合わせるときなんじゃないの?
静江   力を合わせる? なにそれ?
小百合  ・・・
静江   あたしはね、あなたのそういう、なんていうか、なんでもわかってる風に言うところが大っ嫌いなの。
小百合  じゃあ、なんで今まで黙ってたんだ、こんな時になって、なんで今更そんなことを言う?
静江   こういう時だから、こういう時だからこそじゃない。
小百合  じゃあ、お前の本性が出たってことだな。
静江   そうよ、これがあたしの本性よ、あたしがどれだけ部活のこと考えて、みんなに気を遣ってたか・・・
小百合  ずっとそんな風に思ってたわけ?
静江   そうよ、毎日が苦痛だったわ。祐実は祐実で馬鹿なことばっかり言って、いつまでも幼稚で、甘えてばかりで、自分で考えようとしてなくて、小百合は小百合で、なんでも仕切って、あたしの言うことには必ず反対して、みんなは、あんたの言うことならなんでも聞くし、それなのに、あたしを部長に選んで、あたしに恥をかかせる。葉子だってそう、台本書かせてなんて言っておいて、不登校になるし・・・
慎太郎  あの、僕は?
静江   ガキなんだよ。
慎太郎  え?
静江   ガキは嫌いなんだよ。
慎太郎  静江さん・・・
小百合  お前のそういうところが、居場所なくしてんじゃねえの?
静江   だから、偉そうに言わないで!!
祐実   もうやめて!  

  殺伐とした言い争いの中、慎太郎が突然ビリージョエルのストレンジャーを鳴らす。一瞬静まる室内。

慎太郎  みんな、落ち着きましょう。

  間

祐実   これなんて曲?
慎太郎  ストレンジャー。
祐実   どういう意味?
静江   見知らぬ人。
慎太郎  普通はそう訳すんですけど。
静江   違うの?
慎太郎  この歌では、別の顔。
小百合  別の顔? 
祐実   なんか怖いね。
慎太郎  歌の中では、誰でもみんな、自分の中に見知らぬ別の顔を持っているってことです。
祐実   シンタ、すごい。
慎太郎  いえ、山田先生から聞きました。
静江   別の顔こそ、真実なんじゃないの?
慎太郎  え? そうなんですか?
静江   みんな素顔は隠してるものよ。
慎太郎  でも・・・どっちが別の顔かなんて、その人にしかわからないですよね。
静江   今日みたいな日に出るんじゃない・・・本当の顔が。
慎太郎  それってまさか、静江さんのことですか?
静江 ・・・・・・
小百合  二人とも・・・その話は後にしてくんないかな・・・調理室行くけど、いい?
静江   ・・・
小百合  部長、行くよ、静江!
静江   ・・・うん・・・
小百合  じゃあ、みんな。
祐実   あたしも行く! エイリアン、やっつける!

  音楽とともに、様々な小道具を持って、身支度し、部屋を飛び出して行く、部員たち。ひとり残される静江。

  間をおかず、皆戻ってくる。

慎太郎  静江さん!
静江   どうしたの!?
小百合  ないの。
静江   なに? どういうこと?
祐実   誰か助けて!
静江   どうしたの、ねえ!
小百合  ない、何もないの。
静江   え? 何がないの?
小百合  階段も、扉も・・・ないの・・・行けないの・・・どこへも。
静江   何それ!

  その場にヘタリ込む生徒達。階段下へ向かおうとするが、途中で戻ってくる静江。

慎太郎  どうすれば。
静江   黙って、ちょっと黙って・・・
祐実   慎太郎、怖い。
慎太郎  ぼ、僕もです。
静江   小百合。
小百合  なに。
静江   あなたなら、どうする。
小百合  え?
静江   あなたなら、こんな時、どうする?
小百合  どうして・・・
静江   わからないの・・・あたし、どうしたらいいか、わからないの。
小百合  ・・・あたしだって、わからないよ。
静江   でも、あなたはいつも、どんな時でも、明るくて、こうしよう、ああしようって・・・みんなもそれを信じて・・・小百合  何も考えちゃいないんだよ、思いつきで言ってるだけ。
静江   じゃあ、思いついて、お願い、どうしたらいいの、こういう時どうしたらいいの、教えて。
小百合  ええと・・・いざ考えるとなると、何も思い浮かばないよ。

  間

祐実   ・・・ねえ・・・お腹空かない? パン食べよう。いっぱいあるんだ。みんなで、食べよう・・・静江。
静江   ・・・うん・・・
小百合  静江が考えてたことがよくわかったよ。
静江   あなたが部長になれば良かったのよ。
小百合  そんなことないよ。第一投票で決めて、静江が選ばれたんだから。
静江   だって五人しかいないんだよ、部員。三対二だよ。
小百合  あ、お前、自分に入れただろう。
静江   入れてない。
小百合  入れた。
静江   入れてない。
小百合  入れた。
慎太郎  僕は静江さんに入れました。
小百合  あたしも静江。葉子と祐実は? これで決まりだな・・・部長なんてさ、やりたい人がやるのが一番いいんだよ。
静江   頼りなくてすみません。
小百合  そんなことない。
静江   ある。
小百合  ない。
静江   ある・・・
祐実   もういいじゃない、そんなこと、食べよう、パン。

  みんなにパンを配る祐実。

祐実   なんか、ようやくみんなの役に立てた感じ。
小百合  うまいな・・・
静江   祐実・・・ごめん・・・みんな、ごめん・・・こんなあたしに・・・なんで/
祐実   おいしいよ、静江。

  みんな、パンを食べながら、涙ぐむ。

慎太郎  みなさん、ちょっといいですか?
小百合  なんだ?
慎太郎  思い出してください。最初は一階の第一体育館に、小百合さんたちが行こうとしたけど、行けなかった。その後に二階通路からの第二体育館へ行こうとしたけど、行けなくなった。そして、その後は三階へ行けなくなった。そして、窓から見える二体が見えなくなった。そして今度は、階段下の四階がなくなった。そして/
小百合  二体へ行った二人が一体へ行った二人より、遅かったのは?
祐実   ごめん、あたしおトイレ行きたくなって・・・
慎太郎  それで謎が解けました。というか、謎が深まりました・・・
小百合  それで?
慎太郎  つまり・・・言いにくいんですが、下から少しずつ校舎が消えているのではないかと。
静江   消える? だから・・・なんでよ。
慎太郎  わかりませんよ、僕だって!
祐実   いやー!
葉子   祐実ちゃん、落ち着いて。
小百合  慎太郎、変なこと言うな。
慎太郎  でも・・・そうだ、これ!(屋上へ通じる扉へ向かう)
静江   開かないわよ。
慎太郎  やってみましょう、開けば屋上に出られます。

 慎太郎が、鉄扉をガチャガチャさせる。

慎太郎  ダメですね。
静江   シンタ、窓!
慎太郎  窓? ああ、あれ。

  みんなが小窓を見上げる。

小百合  (皆の顔を見回して)よし、やってみよう。

  慎太郎が部室にある脚立を持って来て、セットする。

小百合  しっかり押さえて。
慎太郎  は、はい。
小百合  上見ないで!
慎太郎  ひえひえ・・・
小百合  ジャージ履いてて正解。

  小百合が小窓に辿り着く。

小百合  シンタ、ナグリ。
慎太郎  ナグリって、あのナグリですか? どうするんですか?
小百合  割る。
慎太郎  危ないですよ。
静江   ダメよ、小百合。
小百合  あとヘルメット。
慎太郎  危険です。
小百合  うるせー! さっさと持ってこい!!

  ヘルメット、ナグリを渡す。脚立の途中に慎太郎が待機する。

小百合  お前、何やってんだ。
慎太郎  いえ、僕が代わります、小百合さんは、下から道具を渡してください。上からガラスが飛び散りますから、このヘルメットは、小百合さんがかぶってください。
小百合  お前じゃダメだ、あたしがやる!
慎太郎  ダメです!! 僕がやります! 
小百合  ガキは黙ってろ!
慎太郎  降りてください、小百合さん!
小百合  うるせえ!
慎太郎  ・・・降りろって言ってんだよ!
小百合  シンタ・・・
静江   シンタ・・・
祐実   シンタ・・・
慎太郎  僕は、慎太郎です。
小百合  わかった、代わろう、慎太郎。
祐実   窓の外って、屋上じゃないよね・・・いやー。
静江   祐実! それでも行かなきゃ!
慎太郎  助かるわけじゃないんですよ!
静江   わかってるよ。
小百合  さっさとやって!
慎太郎  ・・・行きますよ! みんな下がって!

  ガラスが破砕する大きな音とともに、暗転。
場面は一転して、災害の救出現場。(音楽)
  
  窓から救出隊員の大きな声が聞こえる。そこは葉子の家。
  慎太郎がそのまま救出隊員となる。同じように、静江が母、小百合が祖母、祐実が妹になる。
  葉子以外の役者達は、葉子が持って来た台本を持っている。

隊員   下に誰かいますか! 返事してください!
サユリ  葉子、行きなさい。
葉子   だめ、みんなを置いていけない。
シズエ  ユミを助けて。
葉子   お父さんは?
シズエ  奥の部屋よ。
葉子   手を伸ばして。
シズエ  ユミを・・・ユミを・・・
葉子   返事して!・・・ユミちゃん・・・
隊員   誰かいますか! 返事してください! 
葉子   助けてー!
隊員   いたぞ、声が聞こえた。(上に向かって)二階に生存者、屋根の窓から救出する!
シズエ  葉子、逃げて。
葉子   できない。
シズエ  おばあちゃんを連れて、逃げて。
葉子   うん。
サユリ  葉子、おばあちゃんはね、こんなところ登れないよ。葉子、行きなさい! あなただけでも、生きなさい。
葉子   みんなを置いて逃げられない! お母さん、おばあちゃん、ユミちゃん、お父さん・・・どこ? お父さん・・・お母さん、あたし・・・みんなを助ける!

  下の階に降りようとする葉子

隊員   降りちゃダメだ! そこに居て!
シズエ  ダメ、来ちゃダメ! 下はもうダメ、逃げなさい! 葉子!
葉子   おかあさん・・・
サユリ  シズエさん! 握って、私の手を握って・・・一緒に居て!
シズエ  お母さん・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・
葉子   お母さん! おばあちゃん!
シズエ  ・・・もっと生きたかった、この子たちと一緒 に。
サユリ  シズエさん、ありがとう。
シズエ  お母さん・・・
隊員   見えますか・・・ここです・・・いいですか、手首をしっかりつかんでください。
葉子   みんなを助けてください。
隊員   もう間に合いません・・・急がないと・・・流されます! ・・・さあ、手を伸ばして・・・
葉子   だめ!
隊員   早く・・・・・・あなたは、生きるんだ!
葉子   ・・・ごめんなさい・・・あたし、行くね・・・忘れない!

  屋根の窓に向かって手を伸ばす葉子。(暗転)

  静寂が戻り、そこは演劇部室。みんなが、台本を閉じながら。

慎太郎  葉子さんは助かったんですね。
葉子   あたしだけ逃げたのよ。
小百合  違うよ。
葉子   二階にいたあたしだけが助かった・・・
小百合 家は?
葉子 救助されたヘリから下を見たら、もうなかった・・・
祐実 ユミちゃんかわいそう、同じ名前で仲良しだったのに・・・
葉子 ここだってそう・・・あたしだけが生き残った・・・
小百合   つまり、葉子は、ここへは来てないのね。
葉子 うん。
静江 あたしたちには何が起きたのか、さっぱりわからなかったけど・・・
慎太郎 これですべての謎が解けました。葉子さんが来てくれたおかげです。

  あたりを静寂が包み込む。

祐実   寒い。
静江   そうね・・・大丈夫?
祐実   うん。
静江   シンタ何やってるの?
慎太郎  いや、このネクタイが、うまく結べなくて。
祐実   あたしが結んだげる。
慎太郎  あ、ありがとうございます。
祐実   格好よかったよ・・・さっき・・・
慎太郎  あれが僕の本当の姿です!
小百合  まじかシンタ・・・足、震えてたんじゃねえの?
慎太郎  バレましたか? ハハハハハ
祐実   思ってたことが、やっと言えた。
慎太郎  (首を抑えて)イテテテテ・・・
小百合  ここに、残しておこうよ。未来の演劇部員が、これを演じる!
葉子   そうね・・・あのね・・・壊されるの。
祐実   何が?
葉子   この校舎、解体が決まったの。
小百合  そう・・・
葉子   小百合、静江、祐実、慎太郎・・・ごめんね、みんなまだ見つかってないの。
静江   そっか・・・そういうことなのね・・・

   間

祐実   ねえ、葉子、聞いていい?
葉子   なに?
祐実   消えちゃったんだよね・・・
葉子   うん・・・
祐実   あたしのお家も・・・家族も・・・葉子、ごめん・・・
葉子   いいのよ、祐実ちゃん・・・あのね/
祐実   やっぱりダメ・・・静江、先に聞いて・・・  
静江   うん・・・弟は、妹は?
葉子   安心して、二人とも元気よ。お父さんも、お母さんも。
静江   ・・・あたしがいない方がうまくいくのかもね。
葉子   違う・・・あなたは家族の一員よ、みんな大事に思ってる。ほら、あなたが修学旅行で買ってきたクローバーのストラップ、お揃いの。みんなが つけてるんだよ。
小百合  うちは? どう?
葉子   大丈夫。あなたがいなくなって、とても寂しがってるけど。そうそう、犬の美代子が三匹も子供産んだのよ。そのうちの一匹が小百合って名前。
小百合  あたし、犬になったのね・・・これでいつでも家族と一緒だね。
慎太郎  僕んところは・・・小百合さん?
葉子   小百合さん。
静江   小百合・・・(小百合に寄り添って)大丈夫?
小百合  弱いね、あたしって。
静江   小百合。
小百合  シンタ、お前の番だよ・・・
慎太郎  小百合さん・・・
小百合  大丈夫だよ。葉子。
葉子   うん・・・二人の弟さんも、お母さんも元気でいるわ。慎次郎君は、政治家になるって、一生懸命勉強してる。
慎太郎  慎次郎が政治家? まじかあ・・・それで、慎三郎は?
葉子   もう中学生よ・・・制服がちょっと大きいけど。
慎太郎  まさか僕のお下がり?
葉子   そうみたい・・・
祐実   葉子・・・
葉子   ようやく生まれた女の子がいなくなって、ご両親もお兄ちゃんたちもがっかりしてるけど、あなたは今でも矢下家のアイドルよ。
祐実   よかった・・・みんな無事なのね。
葉子   ゆうた君。
祐実   え? ゆうた君どうかしたの!?
葉子   大泣きしたのよ、あなたがいなくなって。
祐実   そうなの・・・ごめんね、ゆうた君・・・
葉子   おばちゃんにお花あげるんだって。
祐実   え? おばちゃん?
葉子   あなたのことでしょ。
祐実   デヘ・・・そうだった・・・
葉子   それにね、妹ができたのよ。
祐実   え?
葉子   あなたの妹が生まれたの、どうしても女の子を産むんだって。
祐実   お母さん、頑張ったね・・・よかった・・・あたしのこと、忘れちゃうね。
葉子   そんなことないよ。名前はね、祐希ちゃん。祐実ちゃんのゆ「祐」に希望の「希」。
祐実   祐希ちゃんか・・・
小百合 あ、天海祐希!
葉子   その通り!
静江   葉子。
葉子   なに?
静江   寂しくない?
小百合  家族も、あたし達も、まとめていなくなったんだから・・・あたしなら耐えられないね。
葉子   あたし、自分がやらなきゃならないことが、見つかったの・・・だからもう寂しくない。だから、あたしはここへ来た・・・みんなのことをこれからの人たちに伝えるために・・・今日のことを、書き残すために、そのために、私はここへ来た。
小百合  そうか・・・強いね、葉子。
祐実   葉子、格好いい!
葉子   ・・・みんな、ごめんね。
静江   だめでしょ、泣いちゃ・・・あなたは強いんだから。
小百合 葉子の「stranger」はどっちなの。
葉子 ・・・うん。
祐実   本当は格好よくて、頼りになるのが、慎太郎。
慎太郎  みんなにパンをくれる優しい祐実さん。
祐実   小百合は?
小百合  いつもは威張ってるけど、本当は寂しがり屋の、stranger・・・
慎太郎  マジですか?
小百合  なんだよ!
静江 ・・・・・・
小百合 (静江をじっと見て)本当は優しい、静江の「stranger 」・・・
静江   stranger・・・(涙ぐんで)この課題、やりたかったね。
慎太郎  ほんとですね、山田先生にお願いして・・・葉子さん、山田先生は?
葉子   (首を横に振る)二体へ逃げたの・・・生徒も先生方もみんな・・・
慎太郎  二体って・・・あの、見えなくなった・・・
葉子 そう。
祐実   シンタ・・・元気出して・・・山田先生、向こうで待ってるよ。(慎太郎に寄り添って)
慎太郎  僕は・・・シンタじゃありません・・・慎太郎です・・・

  がっくりと肩を落とす慎太郎を支える仲間の笑顔には、互いへの信頼感が満ち溢れている。

  ビリージョエルの「Honesty」が聞こえている。葉子の中に、失われたすべての人々の記憶が残り続ける。演劇部室で は、いつもの朝練の風景がそこにある。葉子はそれをしっかり胸に刻み付け・・・そして葉子は前を向く。
  
                         

(幕)
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sugisugi   投稿日時 2018/12/29 11:24
仙台高校演劇部 東北ブロック大会出場作品 優秀賞 創作脚本賞受賞作品 男1 女4 上演時間60分
杉内浩幸  投稿日時 2018/12/28 16:48
宮城県大会、東北大会で、それぞれ創作脚本賞を受賞させていただいた作品です。内面の表現が難しい作品ですが、ぜひ取り組んでいただきたいと思っています。

chalog Ver. 0.05 - PetitOOps -

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