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四つ辻

Posted by jun-kan on 13.10.31 17:31
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上演校名:宮城県石巻北高等学校(2013年)
作   :準
人数  :男子4名女子5名
上演時間:約53分

キャスト
 ・優 希…高校二年生の女子
 ・沙也加…高校二年生の女子
 ・美 和…高校二年生の女子
 ・ゆかり…高校二年生の女子

 ・辻 居…高校二年生の男子
 ・五十嵐…高校二年生の男子
 ・仲 本…高校二年生の男子
 ・長谷川…高校二年生の男子

 ・ノッペリさん…ぼろぼろな服装を着て、赤い蝙蝠傘を持っている。

―――――




ME:

♪通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの 細通じゃ
天神様の 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ

幕が開き始める
緞帳が開くと外の風景。竹が立ち並び、行灯がぼんやりと光っている。
    ノッペリさんが舞台中央に座り、ぼんやりと往来の人々を眺めている。
    ノッペリさんの服装はボロボロで少し汚れたような服装。赤いこうもり傘を持っている。
    人々、色々な表情で歩いている(ザッピング)。
    楽しそうな表情、憤っている表情、悲しそうな表情

人 1:今日は天気がいいな。
人 2:昨日、うちの子が歩き始めたんですよ。
人 3:あそこの八百屋、今日は大根が安いって。
人 4:今日、部活七時までだよ。
人 5:なんだか、風が強くなってきたね。
人 6:昨日、彼氏とケンカしてさ〜。
人 7:数学、全然内容がわかんないんだよね。
人 1:電話代今月2万越えちゃったよ。
人 2:今日はカレーにしょう。
人 3:神隠しにあった子がいるんだって。
人 4:バイトのマネージャーむかつくんだよね。
人 5:なんか、腹いてーし。
人 6:新作の靴、かわいくていいよね。
人 7:駅前にカラオケ屋出来たんだけど、受付の人格好良いんだ。。

    人々、他の人と交わり会うこともなく、ただ歩く。
    その中の一人、優希が歩みを止める。照明が暗くなり、人々スローモーションで歩き始める。

優 希:世間にはたくさんの人達がいて、色々なことを考えている。

    人々、ゆっくりと歩いている。

優 希:こんなにもたくさんの人がいるが、私とは誰とも交じらない。いや、交じれない。

    人々、ゆっくり歩く。優希には気づかない感じで。
    ノッペリさん、優希を見る。

優 希:おいて行かれないように、仲間はずれにされないように懸命に話しかける。

    人々に話しかけようとする。しかし、誰も気づかない。

優 希:周りの世界はぐるぐると動く。でも、私はだれとも交錯しない。

    人々、スピードを取り戻し、動き始める。(ザッピング)

人 1:今日もマジで疲れてるし、これ以上やだな。
人 2:早く行かないと新装開店に間に合わないよ。
人 3:あいつ、むかつくんだよね、いつも何を考えているか分からないし。
人 4:雨降ってきそうな天気になってきた。今日傘持ってきてないのに。
人 5:なんでいつもああいう引きつった顔をするかね。
人 6:今日のテレビ楽しみだなあ。早く帰ろう。
人 7:楽しくないなら楽しくないって言えばいいのに。

    人々、去り始めるが、ノッペリさんは残る。

優 希:私はいつものように、笑顔を作って話す。本当は無理に合わせたくない。誰とも交わらなくてもいい。でも、だれかと交わっていたい。もう自分を偽るのに疲れた。

    優希、しゃがむ。
    ノッペリさん、ハケる。

優 希:本当の私は誰?

    SE:チャイム
    照明変化し、下校の風景。優希たちの学校は私服の学校

ゆかり:大丈夫?優希?
優 希:う、うん。ごめん。
美 和:人が多くいるところに行くと、具合が悪くなるって、大変だね。
優 希:ほんと、ごめんね。もう大丈夫。
沙也加:普段から運動してないから、体力ないんじゃないの?
美 和:そうかもね。大変だね。沙也加は違うんだろうけど。
沙也加:当たり前。鍛えているからね。
ゆかり:鈍感なだけじゃないの?
沙也加:ゆかりじゃないんだから。
ゆかり:私は鈍いんじゃないの、最初から何も感じてないの。
美 和:何も考えてないってこと?
ゆかり:失礼な、でも、分かるよね。人に酔うっていう感じ。
沙也加:ゆかりもそんなことあるんだ?
ゆかり:あるある。特に体育の時間終わった後とかね。男子の近くにいくと、具合が悪くなる。
美 和:それは、汗のにおいがきついって、感じじゃないの?
ゆかり:そうなのかな?
沙也加:男の汗のにおいが最高とかいったら、もう変態だよね。

    三人でキャーキャー言ってる。優希だけぼんやりと見ている。

美 和:優希?
優 希:あ、ごめん。なんか少し良くなってきた。
沙也加:ほんと、優希はいつもぼーっとしてるよね。
優 希:そうかな?
沙也加:みんなとわいわい、騒いでいるときもなんか、あんただけいつも離れたところにいるような感じするし。
美 和:あ、確かにそうかも。
ゆかり:私たちと一緒にいるとつまらないのかな?って思う瞬間はあるよね。
優 希:そ、そんなことないよ。ゆかり。
ゆかり:そう?いつのまにかフェイドアウェイしてる気がいつもするよ。
優 希:いや、汗のにおいもそうだけど、あの制汗剤のにおいが混ざる感じもやだな〜とか思ってた。
美 和:ああ、分かる分かる。
沙也加:たしかに、たしかに。一人一人は汗消すのに一生懸命だけど、クラス40人が別なモノ使っていろんな匂いが混ざると…。
ゆかり:しかも、汗のにおいとかも混ざるしね…。
優 希:ね、やだよね。
美 和:うん。確かに嫌だわ〜。
ゆかり:教室に居るときには平気なんだけどね。一回教室から出て、また教室に戻ると息がつまるよね。
優 希:うん。
美 和:ね、もういいよ。汗の話は。それよりどうする?
沙也加:何を?これから?カラオケでも行く?
美 和:ま、カラオケに行っても良いけど。部活の話。
優 希:今日出た課題?
   
 ノッペリさん、ゆっくり舞台上に入ってきて、中央に座る。
    なんとなく、横目で見ている少女達。

沙也加:ああ〜。まじめにやらない部活だろうと思って入った写真部なのに、ふざけてるよね。
ゆかり:うん。失敗した。これぞと思う写真を3枚とってこいってヤツでしょ?
美 和:そう。ただし、適当にやってきたヤツは、即退部とする。
沙也加:そんなの適当でいいんじゃない?どうせ顧問だって写真のことなんか良くわかんないよ。
ゆかり:顧問、実は県でトップレベルの人らしいよ。
美 和:え?そうなの?
ゆかり:うん。近くにいた子が言ってた。前の学校で、「なんとかコンクール」の全国大会に出品させたって人らしいよ。
沙也加:うげえ。そんなヤツがウチの高校来るなよな。
美 和:(ため息)もしかして、上を目差すから、やる気ない生徒は辞めさせるっていうこと?
ゆかり:らしいよ。
沙也加:どうする?でも、今更べつの部活探すのも面倒だよね。
美 和:でしょ?カラオケ行ってる場合じゃないかもよ。
ゆかり:カメラとか、もってないじゃん。
沙也加:良いんじゃないの?スマホで撮って、印刷していけば。
ゆかり:なるほど、。
美 和:じゃあ、何を撮るか考えなきゃ。
沙也加:そうだ。新しく来た顧問、おやじだったし、エロそうだったじゃん。
ゆかり:確かに。
沙也加:だから、こう悩殺ポーズのを。
美 和:うぇえ。
ゆかり:色仕掛け?
沙也加:そうそう。
美 和:先生だよ?
ゆかり:先生といえど、男じゃん。うまくいくよ。
美 和:そう?
沙也加:悩殺ポーズ1。
ゆかり:こんなの?(なんか変なポーズ)
沙也加:何だよ。それ?悩殺は悩殺でも脳みそを殺す、脳殺かよ。
美 和:まあまあ。
ゆかり:じゃあ、やってみろよな。
沙也加:こんなのとか?(ポーズ)
ゆかり:うーん?なんか違うんじゃない?
美 和:かすってるような気もするけど。
沙也加:じゃあ、あんたやってみなよ。(美和に)
美 和:こんな感じ(古い感じのポーズ)
沙也加:なんだよ。それ美和?いつの時代だよ。
美 和:あれ?そう?お父さんの本棚見た時にこんなのが…。
沙也加:え?
ゆかり:じゃあじゃあ、優希は?
優 希:え?
沙也加:みんなやったんだから、優希もさ〜。
優 希:あ、え?…ごめんなさい。

    沙也加・ゆかり、なんとなくため息。

美 和:まあまあ、いいじゃない。ゆっくりまじめに考えようよ。
沙也加:ねえ、あのおばさんなんかいいんじゃない?
優 希:え?
沙也加:写真一枚撮らせて下さい〜。っていえば、撮らせてくれそうだよ。
ゆかり:なんか、芸術的なのが捕れるかもね。
美 和:やめなよ。
沙也加:タイトル「熟女の吐息」みたいな?
ゆかり:うわ〜、何そのセンス。
沙也加:じゃあ、ほら優希。
優 希:え?
沙也加:優希だけ、さっき脳殺ポーズやってないんだから、罰としてあのおばさんに声かけて。
優 希:…私が?
美 和:やめなよ。
ゆかり:じゃあ、優希行ってみよう。
沙也加:やってみよう。
優 希:私は、
沙也加:はいはい、行ってみよう。

    そういって、沙也加、ゆかりを押す。

優 希:え?あ。
ノッペ:やあ。
優 希:あ、はい。
ノッペ:こんにちは。いや、こんばんは、かな?
優 希:あ、こんにちは。
ノッペ:私に何か?
優 希:あ、いえ。
ノッペ:みんなと一緒にいるのに、一人でいるような感じがする子だね。

    ノッペリさん笑う。気味悪がり、そこを離れようとする優希。

ノッペ:ああ、ごめん。こんな言い方をすると気味が悪いね。別に怪しくはないよ。まあ、怪しい人が自分のことを怪しいとは言わないだろうけど。
優 希:そ、そうですね。
ノッペ:そう。怪しくはない。ただ変人なだけだ。
優 希:そうですか。(去ろうとする)
沙也加:ねえ、優希まだ?
ノッペ:…
美 和:すいません。忙しいですよね。
沙也加:何いってるの、美和?
ノッペ:忙しいよ。
ゆかり:は?ただ座ってるだけじゃん。何が忙しいのさ?
ノッペ:座ってるんじゃないんだ。この辻に座っていつも通行する人の話を聞いているんだ。
優 希:辻?
ノッペ:ああ、辻っていうのは交差点のことだよ。ここにいると色々な話が聞こえてくるんだ。
ゆかり:他の人の話を?
ノッペ:そう。
沙也加:盗聴じゃん?
ゆかり:面白い話とかある?
沙也加:でも、気味悪くね。会話を聞かれてるなんて。
ノッペ:ここに座ってぼーっとしているとね、色々な話が聞こえてくる。
美 和:ね、そろそろ行かない?
ゆかり:そうだね、カラオケでも行こうか。
優 希:え?あ。
沙也加:なんか気味悪いし。
美 和:沙也加。
沙也加:いいじゃん。本当のことなんだから。
ゆかり:たしかにね〜。それにこの辺じゃなかったっけ。人が行方不明になってるって話。
沙也加:何それ
美 和:あ、聞いた、それ。神隠しでしょ?
沙也加:何よ。神隠しって?髪の毛隠すの?ハゲ隠し?
ゆかり:何言ってんのよ、あんたは。カラオケ行こっか。優希は?
優 希:私は…
沙也加:何?
優 希:あ、いや。
沙也加:行きたくないなら行きたくないって言えばいいじゃん。
ゆかり:また?この前もそうだったよね。
美 和:いいじゃん。無理してつきあうことないよ。
ゆかり:そうそう。行きたくないのに無理に来ても、逆にもりさがるしね。
沙也加:それもそうね。
優 希:ごめんね。
沙也加:じゃあ、みんな行こうか。
美 和:じゃあね、優希…。

    三人、ハケる。

ノッペ:君はいかないの?
優 希:私は…。
ノッペ:どちらでも私には関係ないけど。
優 希:あの…、他の人の話を聞くって楽しいですか?
ノッペ:楽しいも、楽しくないもないよ。
優 希:じゃあ、何で?
ノッペ:「辻占」っていってね。辻道で通行するの話を聞いて、今後の自分のあり方を決めるんだよ。
優 希:辻占?
ノッペ:そう。
優 希:他の話を聞いて、自分の…。
ノッペ:あの子達と行かないの?
優 希:私は…。
ノッペ:♪通りゃんせ、通りゃんせ。ここはどこの細道じゃ…

優希うつむき、上手にハケる。(重ならないように)
    辻居、仲本、舞台上に出てくる。

辻 居:やっほ、ノッペリさん。
仲 本:こんばんは〜。
ノッペ:やあ、みんな。
五十嵐:部活の課題どうするよ。課題。
仲 本:どうするも、こうするも、部活を辞めたくないなら出すしかないだろ。
長谷川:そうだね。
辻 居:写真を3枚撮って、提出すればいいだけじゃん。
五十嵐:お前達、簡単に考えすぎ。
仲 本:なんだよ、五十嵐。簡単な話だろ。3枚撮ればいいんだよ。
辻 居:何を撮るかな〜。
長谷川:辻居は写真を撮るのが好きだもんな。
辻 居:まあね。普段見てるのと違った角度で見る感じがね。
五十嵐:違った角度?
辻 居:いつもは何気なく見ている風景を違ったように見るのがね。
仲 本:なるほどね。それは面白い考え方だね。
五十嵐:いや、おれも写真撮るの好きだよ。
長谷川:五十嵐が?
五十嵐:おう。違った角度だろ。

    五十嵐、明らかに盗撮するような感じの動きをする。

仲 本:お前。
辻 居:おいおい。
五十嵐:俺さ〜写真部に入部した理由って、そこなんだよな。カメラ持っていても怪しまれないし。
仲 本:それ、犯罪だから。
五十嵐:え?
長谷川:変質者。
五十嵐:いやいや、風景を撮っているウチに、いつの間にか、気づかないうち、たまたま、偶然に、そういうのが写るかもしれないというだけで。
仲 本:変態。
長谷川:近寄るな。
五十嵐:え?そこまで言う?
長谷川:寄るな。汚れる。
辻 居:長谷川、そこまで、言わなくても良いんじゃない?
五十嵐:そうだよな。思春期特有の茶目っ気だよな。
辻 居:いや、盗撮は犯罪だから。
五十嵐:え?そうなの、犯罪なの?
仲 本:当たり前だろ。
五十嵐:とか言って、お前達だって本当はそれが目的で入部したんだろ?
長谷川:そんなの五十嵐だけだ。
五十嵐:マジか。俺だけ?
辻 居:ま、そんなの撮っても、どうせ先生には提出できないだろ。
五十嵐:いや、あの新しい顧問はエロそうだったからな。
仲 本:そんなことないだろ。先生なんだから。
長谷川:いや、先生も男だから。
五十嵐:だよな長谷川。あの顔は今までも指導とか称して、女子生徒にセクハラとかしてるぜ、絶対。
仲 本:んな、わけないだろ。
五十嵐:(長谷川に)君、なかなか筋が良いね。でもカメラの持ち方がそれじゃダメだな。(と言いつつ、男3の手を握る。)
長谷川:(ノって)先生、そうですか?
五十嵐:そうだ、カメラの持ち方はこう。(と言いつつ後ろから抱きしめる)
長谷川:先生!
    
五十嵐と長谷川ふざけ合う。

仲 本:おまえら、男同士で抱き合って楽しいか?
辻 居:お前達にそんな趣味があったとはな。
五十嵐:(冗談ぽく)そうなんだ。実は…。
長谷川:責任とってね。
辻 居:(笑って)ま、いいじゃん。とりあえず締切まで、まだ時間があるんだから。
仲 本:だな。ゆっくり何撮るか考えようぜ。
五十嵐:ええ、マジで。
辻 居:だって、提出しないと退部だぜ。退部。
五十嵐:辻居はいいよな。もともと写真好きだし。
辻 居:まあね。何撮るかな。いままでのでもいいのかな?
五十嵐:辻居以外の俺たちだな、何撮るか悩むのは。
長谷川:俺も決まってるよ。
仲 本:マジで?長谷川。辻居が入ったから何となく入っただけだからな〜。俺も。
五十嵐:だよな。仲本。
仲 本:とりあえず今日は駅前の新しい店、行こうぜ。
長谷川:じゃあ行きますか。
辻 居:行こう行こう。

    少年達、ハケる。照明が変化する。

ノッペ:♪通りゃんせ、通りゃんせ…。

    ノッペリさん、歌いながらハケる。
    SE:チャイム。少女たち、入ってくる。

沙也加:ねえ、そういえばさ優希は行きたいところとか、ないの?
優 希:え?
ゆかり:いつも優希いなくなるし、たまには優希の行きたいところ、行くのもいいかもね。
沙也加:ね?でしょ?
美 和:みんな一緒に居れるのは楽しいけど…。
優 希:行きたいとこ?
沙也加:そうどこでもいいよ。変な所じゃなきゃ。
ゆかり:どこよ変な所って?
沙也加:いや、わかんないけどさ。

    優希なんとなく、うつむく。

沙也加:(ため息)なんか、ないの?
優 希:……
沙也加:優希っていつもそのペンダントしてるよな。
優 希:う、うん。…お父さんからもらったんだ
沙也加:ちょっと見せてよ。(見ながら)あんまり似合ってなくない?
優 希:(渡しながら)そう?
ゆかり:そういうこというなよな。気にいってんだろうから。
沙也加:だって、似合ってないなら似合ってないって言わなきゃ。
優 希:そうかな?
美 和:そんなことないんじゃない。
沙也加:似合ってないなら似合ってないって、言ってあげるのも友情じゃない?
優 希:でも。
沙也加:そうだ。いまから買い物にいってさ、優希のためにアクセサリ探してやろうよ。
ゆかり:いいね。あたしも新しいの欲しいとか思ってたし。
沙也加:決まり。たまには優希行こうよ。
優 希:え、あ、うん。でも、
沙也加:何?行かないの?あんたつきあい悪いよ。
美 和:気に入ってるんだからいいじゃない。
ゆかり:気に入ってるかも知れないけど、結構古いしさ。その時の気分で変えれたらそれでいいじゃん。
優 希:そう、かもね。
沙也加:何?嫌なの?嫌なら嫌っていえばいいじゃん。いつもいつも。
美 和:ちょっと止めなよ。
ゆかり:別に無理強いしているわけじゃないんだから。
優 希:う、うん。
沙也加:どっちなのよ?
優 希:……。
ゆかり:なんか、端から見たらいじめてるみたいじゃない?
沙也加:そんなことないよ。このペンダント返さないとかなら、別だけどさ。

    優希、黙ってペンダントを取り返そうとする。

沙也加:何?優希?別に返さないとかいってないじゃん。

    沙也加、なんとなく強引に奪い返す。

美 和:やめなよ。
沙也加:だってさ。返さないのに無理矢理とられるのはむかつくじゃん。
ゆかり:いいから返しなよ。

    優希、また、奪い返そうとする。
    沙也加、奪い返されないように強く握る。
    ちょっとした加減でペンダントが竹の後ろに飛ぶ。

美 和:あ。
沙也加:なんなのよ。優希。
ゆかり:どこ行った?

    優希、走り出し、ハケる。

美 和:あ、優希。

    美和、ゆかり優希を追いかける。

沙也加:なんなの、むかつく。

    沙也加、ノッペリさんと目が合う。

沙也加:何?なんか文句でもあるの?
ノッペ:……。
沙也加:何なのよ。もう意味わかんない。どいつもこいつも嫌い。もう嫌だ。
ノッペ:君はどうしたいの?
沙也加:何?
ノッペ:どうしたいんだい?
沙也加:…どうって、わかんないよ。私はみんなと仲良くしたいだけなのに…。優希も…。
ノッペ:…。
沙也加:苛々する。うまく自分の気持ちが伝えられなくて。
ノッペ:気持ち?
沙也加:気兼ねなく、隔たりなくしたいだけなのに、どうしてうまくいかないのよ。
ノッペ:…。
沙也加:もうなんか疲れた。ここから居なくなりたい。
ノッペ:いなく…?
沙也加:余計なことを考えなくて住むんだったら、どこでもいい。
ノッペ:♪通りゃんせ、通りゃんせ〜
沙也加:何?
ノッペ:ここはどこの細道じゃ?
沙也加:何、歌ってるのよ?

    ノッペリさんに合わせて、声がさらに聞こえてくる。
    沙也加、無表情になり、ハケる
辻居入ってくる。

辻 居:やあ、ノッペリさん。今日も人間観察?
ノッペ:辻占。今後どう行動するか占っているんだ。
辻 居:そう?
ノッペ:今日も写真?
辻 居:そう。ここで撮ると、何となく写真が面白い感じに写るんだよね。なんでだろ?
ノッペ:何でかな?
辻 居:写真って面白いよ、他の世界を見てる感じで。撮ってあげようか?
ノッペ:(少し慌てて)やめてくれ。魂が吸い取られる。
辻 居:魂?そんなわけないじゃん。
ノッペ:いや、カメラってのは魂を写真に封じ込めるんだよ。
辻 居:オッケー、オッケー。撮らないから。
ノッペ:今日は一人なのかい?
辻 居:写真を真剣に撮るときは一人って決めてるから。
ノッペ:じゃあ、私もいないほうがいいかな?
辻 居:え?ああいいよ。別に、ノッペリさんは気にならないから。
ノッペ:そうかい。
辻 居:うん。時々一人になりたいときがあって、ここに来ると、なんか普段の生活とがらりと変わる感じで落ち着くんだ。
ノッペ:不思議だね。
辻 居:不思議だね。
ノッペ:さて、そろそろ帰ろうかな?
辻 居:そう?じゃあ、またね。

    ノッペリさん、立ち上がって去る。
    少年たち、出てくる

五十嵐:辻居、こんなところにいたんだ。
辻 居:おう。
仲 本:何を撮ってたの?
辻 居:う〜ん。まだ撮ってないんだけどね。
五十嵐:かわいい女の子通ったか?
長谷川:そんなことばっかり考えてるんだ?
五十嵐:悪いか。一番興味がある時期だろ。なんだっけ?発情期?
仲 本:思春期じゃねの?
長谷川:アホ。
五十嵐:お前達は興味ないのかよ?
長谷川:ない。
五十嵐:マジで?お前どっかおかしいって。
仲 本:お前(五十嵐)もなんかおかしいけどな。
五十嵐:だって、人類には男と女しか、いないんだぜ。
仲 本:どっちにも入らないヤツもいるんじゃない?
五十嵐:え?ああ、えええー。
仲 本:なんだよ、急に。
五十嵐:長谷川、お前もしかして、そうだったのか?
長谷川:何?
五十嵐:いや、みなまで聞くまい。
辻 居:五十嵐、どうした?
五十嵐:いや、だからさ、長谷川は男しか…。
長谷川:殺すぞ。
五十嵐:いひゃー。冗談、冗談。

    と言いつつ、なんとなく長谷川から遠ざかる三人。

辻 居:ところで、仲本は何写真撮るか決めたのか?
仲 本:ん?ああ、まあね。
五十嵐:ええーマジで。辻居と長谷川はもう決まってるんだろう?俺だけかよ!
長谷川:仲本、何撮るの?
仲 本:妹。
長谷川:え?
辻 居:何を撮るって?
仲 本:俺の妹。
五十嵐:妹って?仲本の妹?
仲 本:そう。俺の妹ってかわいいじゃん。
辻 居:仲本の妹って、小学生だよな?
仲 本:おう。可愛い盛りだよな〜。ランドセル姿が…。
辻 居:五十嵐は、さすがに、小学生は?
五十嵐:ないだろう〜。
辻 居:だな。
五十嵐:長谷川も、仲本も変態だったんだな。俺らだけだよ、まともなの、辻居。
辻 居:ま、いいじゃん。そんなことより、どっか遊び行こうぜ。
五十嵐:いいね。賛成。

    少年たち、ハケる
    ゆかり、美和出る。

ゆかり:まったく、優希も沙也加もさ〜。
美 和:なんで、ケンカになるかね。
ゆかり:優希、見失ったね。
美 和:あれ?沙也加は?
ゆかり:(ため息)沙也加までいなくなってるし、手分けしてもう一回探すか。
美 和:じゃあ、あたし優希を。

    ゆかり、美和ハケる。
    五十嵐、長谷川出る。

五十嵐:あれ?辻居達どこ行った?
長谷川:お前が一人でずんずん行くからはぐれたんだろ。
五十嵐:だって、楽しみじゃん。
長谷川:(ため息)あれ?なんか落ちてる。
五十嵐:お、なんだ?金目のものか?
長谷川:浅ましいな。

    長谷川、屈んで拾う。手には優希のペンダント。

五十嵐:ペンダント?売れば、金になりそう?
長谷川:浅ましい。
五十嵐:あれ?これ、辻居がいつもしてるのに似てない?
長谷川:そうかも。
五十嵐:辻居が、俺たちはこっちだよって、教えるために置いていったのでは?
長谷川:んな、わけあるか。

    五十嵐、長谷川ハケる。
    美和、ゆかり出てくる。

美 和:いた?
ゆかり:やっぱりいない。あ、そういえば、優希のペンダント!
美 和:どの辺だっけ?

    美和、ゆかりペンダントを探す。

ゆかり:あれ?
美 和:あった?
ゆかり:ない。そっちは?
美 和:この辺だったよね?
ゆかり:そう思ったけど。

    ザッピング
    いつの間にか美和、ゆかりもザッピングに入る。

人 1:なんだか肌寒くなってきたね。
人 2:駅前のカラオケ屋、人ずいぶんならんでるよ。
人 3:神社の前の交差点にいつも人が座ってるよね。
人 4:新しい洋服かったんだけど、なんか失敗した。
人 5:新しく来た先生、なんか怖いんだよね。
人 6:夕方になると変質者がでるかもしれないから気をつけてね。
人 7:また、女子高生が一人この交差点で行方不明になったらしいよ。

    ノッペリさん、辻に座る。
    しばらくすると優希、歩いてくる。

ノッペ:やあ。
優 希:……。
ノッペ:(ため息)無視かい?
優 希:あ、ごめんなさい。そんなつもりじゃ。
ノッペ:ま、いいよ。今日はまた一段と心ここにあらずだね。ケンカかい?
優 希:ケンカですらないかも。どうしていいのかもう分からなくて。
ノッペ:ふ〜ん。じゃ、どうもしなければいいんじゃない?
優 希:そんな。

    二人、だまりこむ。

優 希:私、友だちとどう接して良いか分からなくて…。
ノッペ:うん?
優 希:私いつも自分のしたいこととか、考えていることを話すと嫌われるような気がして。いつも周りに合わせていたんだ。
ノッペ:肩が凝りそうな話だね。
優 希:そしたら、今日、友だちから何がしたいのか聞かれて。いつも私が積極的に参加してないの考えて、私がしたいことは何?って聞いてくれたんだと思う。でも、私、何をしたいのか思いつかなくて……。
ノッペ:したいこと無いんだ。寂しいね。
優 希:……。
ノッペ:それで?
優 希:答えられなくて黙っていたら、私のペンダントのことを…。
ノッペ:ペンダント?
優 希:お父さんからもらった大事なペンダントなんだけど、私に似合わないとこか、新しいペンダント買ったらとか言われて…。もう私のお父さんいないから、なんだか悲しくなって。
ノッペ:お父さん、居ないんだ?
優 希:私がお母さんのお腹に居たときに、亡くなったんだって。だから、直接は顔も知らないんだ。
ノッペ:ふ〜ん。
優 希:お父さんからもらったのってペンダントと「優希」っていう名前だけだったから、なんか、それ否定された気持ちになって、辛かったんだよね。
ノッペ:そっか。
優 希:なんか、話してたら少し楽になっちゃった。
ノッペ:そう?
優 希:えっと、名前は?
ノッペ:ノッペリさんって、仲のいい人には呼ばれてるよ。
優 希:なんか、ノッペリさんって、一緒にいると落ち着くね。いろいろと心の中のこと友だち相手では話せなかったのに。
ノッペ:……。
優 希:あ、ごめんなさい。ノッペリさんだなんて、なれなれしく。
ノッペ:別にいいよ。
優 希:…ありがとう。私、お父さんから「ゆうき」って名前をもらったのに、全然勇気がなくて…。
ノッペ:勇気、ねぇ…。
優 希:私、辻居優希っていいます。
ノッペ:そう?
優 希:ノッペリさん、ありがとう。私もう一度話してみる。

    優希、ハケる

辻 居:ノッペリさん。
ノッペ:やあ、辻居君。写真、いいの撮れたかい?
辻 居:全然ダメ。なんかドクター、スランプかも。
ノッペ:辻居君はいつも良い笑顔だね。
辻 居:まあね。いつも悔いの無いよう必死に頑張ってるからね。
ノッペ:そうかい?
辻 居:なんか、いつもと違う世界を写真で表現したいんだけどね。
ノッペ:違う世界ね。
辻 居:?
ノッペ:辻居君は違う世界って存在すると思う?
辻 居:世界?世界は一つでしょ?ノッペリさん?
ノッペ:じゃあね。

    ノッペリさん去る。
    訳が分からない感じの辻居立ち尽くす。
    ザッピング

人 1:神社の元巫女だった野辺さん知ってる?昔、人に裏切られておかしくなったんだってよ。
人 2:来週あたりから天気が崩れるらしいね。台風がくるかもしれないってよ。
人 3:交番のところのスーパーで卵が今日は安いらしいよ。
人 4:大好きなあの作家の最新作が今日発売なんだよ。超楽しみ。
人 5:あそこの高校、最近スポーツで頑張っているらしいね。大会も良い成績残してるって。
人 6:今日の夕食はシチューにしようかな。寒くなってきたし。
人 7:神社、もうすぐ取り壊すらしいね

ゆかり:優希?

いつのまにか、優希舞台上を歩いている。

優 希:美和。さっきはごめんね、何だか…。
ゆかり:あ、あのさ、さっきのペンダントなんだけど。
優 希:うん。大事なペンダントなんだ。死んだお父さんの形見で…。
ゆかり:え?
優 希:だから、似合ってないかも知れないけど、返してもろおうと思って。

    ザッピング

五十嵐:なあ、仲本?
仲 本:あん?
五十嵐:辻居って、ペンダントしてたよな。
仲 本:あの古めのやつだろ?
五十嵐:そうそう。さっきそれ拾ったんだけど。辻居しらねえ?
仲 本:さっき、神社の方に歩いて行ったような気がするけど?

    ザッピング

優 希:ねえ?沙也加は?
美 和:え?
優 希:最近、沙也加学校休んでるじゃない。どうしたのかなと思って。
美 和:あ、ああ。
優 希:私はほら、この前、ケンカみたいになったから、話がしたいなと思ったんだけど…
美 和:ねえ、優希。
優 希:どうしたの?美和
美 和:沙也加、行方不明なんだって。

    ザッピング

長谷川:辻居?
辻 居:おう。長谷川。どうした?
長谷川:五十嵐が探してたぜ。
辻 居:五十嵐が?どうして?
長谷川:辻居のペンダント拾ったからって。
辻 居:ペンダント?俺は自分のしてるぜ。

    辻居、ペンダントを出す。優希のと同じペンダント。
    ザッピング

ゆかり:どうしよう、美和。
美 和:え、何が?
ゆかり:優希のペンダント。
美 和:説明して弁償するしかないんじゃない。
ゆかり:あれ、お父さんの形見なんだって。
美 和:形見?そんな大事なやつなの?
ゆかり:どうしよう、沙也加も行方不明だし。
美 和:どこ、いったんだろうね。あのケンカの後みたいだよ。

    優希、いつの間にか入って来て、美和とゆかりの話を聞いている。

ゆかり:優希!
優 希:私とケンカした後に、行方不明に?
美 和:優希のことは関係ないと…。

    優希、走り去る。

二 人:優希!

    優希を追いかける。
    仲本、辻居入ってくる

仲 本:あれ?辻居?
辻 居:おう。五十嵐しらない?
仲 本:さっきまで、一緒だったんだけどな。
辻 居:そうなんだ、参ったな。探してるって聞いたんだけど。
仲 本:いいんじゃね?明日、また会えるだろうし。
辻 居:それもそうか。
仲 本:それよりも、あそこの神社取り壊すらしいぜ。
辻 居:え?どこ?
仲 本:ほら、いつも辻居がノッペリさん?に会いにいってるところ。
辻 居:じゃあ、ノッペリさんどこに行くつもりなんだろ?

    ザッピング。
    とぼとぼと優希が歩いてくる。

人 1:困ったときは、誰かに聞いてみると良いかもしれないね。先輩とか周りの人とかに。
人 2:四方八方回って、もうどうしていいか分からなくなったら、後は神頼みしかないよね。
人 3:この辺で神頼みと言えば、あの沼の近くの神社かな。野辺さんって人が神主だったよね。
人 4:神社にいるノッペリさんって違う世界をいつ見てるんだってよ。
人 5:失せもの捜し物は、神社に賽銭すると見つかるんじゃないかな。
人 6:ノッペリさんって人と仲良くするとその人が一番だと思う世界を見せてくれるらしいよ。
人 7:いつもこの辻道でぼーっとしている人が野辺さんでしょ?

    優希の前にいつの間にか、ノッペリさんがいる。

優 希:…ノッペリさん。
ノッペ:やあ、どうしたんだい?そんな顔で。
優 希:ノッペリさん…、噂を聞いたわ。
ノッペ:噂?なんだい?
優 希:神社の前にある辻道。そこにいる人にお願いすれば、自分の望む世界を見せてくれるって。
ノッペ:噂、かい?
優 希:前にノッペリさんが教えてくれた辻占い。あの方法で通行する人の話を聞いていたの。そしたら、ノッペリさんがそういうことが出来るはずだって。
ノッペ:望む、世界ね……。
優 希:私はもうどうしていいか分からない。だから、
ノッペ:じゃあ、どんな世界を望んでいるんだい?
優 希:それは……、…わからない。
ノッペ:わからないのに、私にその世界を見せろと言うの?
優 希:だって…、私のペンダントが…。沙也加が…

    しばらく、優希を眺めていたノッペリさん。おもむろに「通りゃんせ」を歌い出す。

ノッペ:♪通りゃんせ、通りゃんせ。
優 希:何?
ノッペ:♪ここはどこの細道じゃ?

    照明:風?
    また、ノッペリさんの声に合わせて歌が聞こえる。

ノッペ:君に望む世界を見せることなんかできないよ。
優 希:え?
ノッペ:私はあくまで、誘うだけ。
優 希:どういうこと?
ノッペ:あとは自分で考えるといい。必ずしも、君にとって居心地のいい世界とは限らないよ。

    照明、変化
    人々「通りゃんせ」を歌いながら歩き始める。
    徐々に竹車を動かし、違う世界が展開されていく。

ノッペ:ここが交差点。
優 希:え?何?

    人々、歩き始める。ノッペリさんいつの間にかいなくなる。

優 希:ノッペリさん?

    四つ辻がいつのまにか構成される。

優 希:どこに行けばいいの?

    優希、歩く、その時辻居とぶつかる。

辻 居:あ。
優 希:あ、ごめんなさい。
辻 居:こっちこそごめん。ぼーっとしてた。
優 希:いえ、ごめんなさい。ちょっと人を探していて…
辻 居:人捜し?
優 希:あ、野辺さんという人で…。
辻 居:ノッペリさん?あ、俺もちょうど探してたんだ?
優 希:ノッペリさんを知ってるの?
辻 居:そりゃ、友だちだから。
優 希:友だち?
辻 居:そっか。ノッペリさんの神社が壊されるって聞いたから、どうするのか聞きたかったんだけど。

    長谷川、出てくる。

長谷川:辻居、大変だ。
優 希:え? 
辻 居:どうした?
長谷川:神社の取り壊しが始まったんだけど、女の子が巻き込まれたって。
辻 居:え?
長谷川:仲本達も、もう行ったんだけど…。
辻 居:大変だ。すぐ助けにいこうぜ。
優 希:え?
長谷川:いや、危ないだろ。すぐ消防が駆けつけてくれるらしいけど…。

    辻居、走り出す。

長谷川:おい、辻居。いつもこうだ。

    長谷川、辻居を追いかける。

優 希:どういうこと?さっきの人、辻居って?私と同じ名字?

    優希、後を追いかける。
    SE:サイレン?
    仲本、五十嵐そこにいる。

仲 本:おい、あぶねえんじゃないか?

    辻居、そこへ入ってくる。

辻 居:仲本。あ、五十嵐もいたのか。
五十嵐:辻居、なんか大変なことになってるぜ。
辻 居:どうしたんだ?
仲 本:奥の神社がもう古いから壊そうと思っていたら、急に崩れ始めたんだってよ。
五十嵐:それで、そこにうちの学校の写真部の女子がいたらしくて…。

    そこへ、長谷川と優希が入ってくる。

長谷川:おい、辻居、一人で先に行くなよ。
辻 居:悪い。俺、行くよ。
五十嵐:おい、辻居。よく知らない女の子だぜ。
辻 居:だって、黙ってられないだろ。おれ行くから。
優 希:どうして?
辻 居:え?
優 希:知らない子の為にどうしてそこまでするんですか?
辻 居:いや、どうしてって。
五十嵐:こういうやつなんだよ。辻居って。
辻 居:だって、同じ学校の子だし。
仲 本:確かにな。でも、お前のことだから、学校違っても行くって言うだろ。
長谷川:ああ。たぶん行くだろうな。
辻 居:まあ。
優 希:…私のお父さんもそういう人だったみたいで、私の産まれる前に死んだらしいけど。結果的に自分が傷付いたらどうするの?
辻 居:う〜ん。そこまでは考えてないけど、でもだまって居る方が後で嫌な気持ちになるでしょ。勇気をもって行動すれば、なんとかなるよ。
優 希:そうかな。
辻 居:俺、行くね。
三 人:おい、辻居。

    辻居、中に飛び込む。照明変化する。

優 希:そういって彼は神社の境内の中に入っていきました。彼の友だち達は慣れているのか、彼を止めようとする大人達を食い止めていました。

    辻居、女の子を連れて戻ってくる。

優 希:沙也加?
沙也加:優希?
優 希:沙也加、どうしてここに?
沙也加:わからない。気づいたらあそこにいて…。優希、ごめんね。
優 希:わ、私。
辻 居:まず、休んだ方がいいよ。

    沙也加、辻居とハケる

優 希:沙也加を彼が助けた後、神社は崩れました、確かに間一髪という感じでしたが、周りの大人からは怒られていました。

    少年、三人で謝っている様子。途中で辻居も連れてこられ、一緒に怒られる。

優 希:たしかに、今回は偶然助かったから良かったものの…、私には彼のような気持ちが全然分かり
ません。自分のことを省みず、他人のために…。

    照明、戻る。

五十嵐:いやあ、怒られたな。
長谷川:うん。怒られた。
仲 本:辻居とつきあってると、いつもこうだしな。
辻 居:(笑って)ごめんな。
五十嵐:まったく、笑ってごまかそうとするなよな。
辻 居:えへへへ。
優 希:そうですよ。笑って済まされることじゃないですよ。
長谷川:へ?
優 希:だって、みんな怒られたわけだし…。
仲 本:なれてるけどね。
優 希:え?
五十嵐:ま、それでも怒られるのは嫌だけどね。
長谷川:でも、辻居といると退屈しないよな。
仲 本:今度は何するのかなって思うね。
五十嵐:あ、それ言える。今回はびっくりしたけどさ。
優 希:どうして?
五十嵐:何が?
優 希:迷惑かけられてるのに、何でそんなに笑ってられるの?
長谷川:迷惑?
優 希:だって、そうじゃない。怒られたりして。私だったらそんなこと出来ない。
長谷川:迷惑じゃないよ。別に。
五十嵐:うん。変に気を遣われるよりいいね。
優 希:……。
仲 本:そうそう。気の遣いかたにもいろいろとあるけどね。ま、言いたいこととかやりたいことを変に我慢されるよりはいいや。
辻 居:そうそう。
長谷川:調子にのんな。
辻 居:へへ。
五十嵐:あ、そうだ。そんなことより。辻居。
辻 居:何?
五十嵐:お前、ペンダント落としただろ?拾っといてやったぞ。
辻 居:ペンダント?俺持ってるよ。
五十嵐:え?でもお前がいつもしてるのと同じだと思うんだけど。

    五十嵐、ペンダントを出す。

辻 居:本当だ。おれのとそっくりだ。
優 希:あ…。それたぶん私の…。
五十嵐:あ、そうなの。良かった。でも、似てるね。
仲 本:もしかして、
長谷川:あ、もしかして。
辻 居:何?
長谷川:彼女?
五十嵐:ああ、ペアルックみたいな。
辻 居:は?
五十嵐:お前、俺たちに内緒で。う〜。むかつく。
長谷川:ひがみ根性。
五十嵐:だって、お前達だってうらやましいだろ。いいな〜、彼女。うわ、なんか甘酸っぱい響き。
仲 本:甘酸っぱい?
五十嵐:だってそうだろ。うわ〜、俺たち友だちだよな。俺のものは俺のもの、友達のものも俺のものだよな。
仲 本:お前。どこのガキ大将だよ。
辻 居:いや、違うよ。
長谷川:じゃあ、五十嵐の財布もおれのもの。

    長谷川、いつのまにか五十嵐の財布を持っている。

五十嵐:お、お前いつの間に?スリか?
長谷川:友だちのものは俺のもの。

    長谷川、財布をもってハケる

五十嵐:おい、長谷川返せよ。

    五十嵐、追いかけながらハケる。

仲 本:さてと…。

    仲本、はけようとする。

辻 居:おい、仲本。
仲 本:(親指を立て)グッドラック。
辻 居:いや、違うから…。

    仲本、はける。
    舞台袖から、五十嵐、長谷川もちょっと顔を出し。

三 人:グッドラック。

    五十嵐だけ、親指を下に向ける。

辻 居:いや、違うんだけど…
優 希:いい友だちだね。
辻 居:面白いやつらでしょ?
優 希:うん。
辻 居:よかったね、ペンダント。
優 希:うん。お父さんからもらった大事なペンダントなんだ。
辻 居:あ、そうなんだ。
優 希:ねえ、さっきのこと…。
辻 居:ああ。だって、すぐ行動しなきゃ危ないじゃん。そうおもったら行動しなければ。
優 希:でも…
辻 居:それに、君だったらどうする?自分が何とかしようとすれば、何とかなるかも知れない。だったらどうする?見捨てる?
優 希:でも、かえって危ないかも知れないし、余計なお世話かも知れない。
辻 居:確かにね。でも、やらないで済ませるより。やった方が気持ちはいいさ。あとから恨まれるかも知れないけど、そのときはその時。自分がどう思うかだよ。
優 希:自分が…?
辻 居:うん。他人のことを考えなくてもいいとは言わないけど、他人のことばっかり気にしてたら、自分が楽しくない。
優 希:楽しく…。
辻 居:ま、危険もあるかも知れないけど、勇気をもって行動。結果はその時考える。でも、その結果だって、自分がどう思うかだから。
優 希:お父さんもそんなこと言ってた。
辻 居:お父さん、いいこと言うね。

    なんとなく、黙る二人。

辻 居:でも、そんな時でも迷うときはあるよ。
優 希:……。
辻 居:自分のやっていることが本当にいいのかなって。そんな時はここに来るんだ。
優 希:ここ?
辻 居:ノッペリさんのこと、知ってるんでしょ?聞かなかった?辻占。
優 希:聞いた。通行人の会話を聞くってやつだよね。
辻 居:そう。この四つ辻に立って、ぼーっと会話を聞いてるんだ。これからどうすればいいのか。
優 希:四つ辻?

    いつの間にかノッペリさんがいる。

ノッペ:そう、四つ辻。
辻 居:ノッペリさん。
ノッペ:二本の道が交錯し交わった場所。そこが四つ辻。
辻 居:ノッペリさん?
ノッペ:四つ辻の真ん中にいる人は、どの道に進むかは自分次第。
優 希:ねえ?ここが違う世界なの?辻居さんて?
ノッペ:優希の望む世界がどうかはわからない。でも、優希にとって必要な世界。
辻 居:どういうこと?
ノッペ:私には時間を戻したり、早回ししたりすることはできない。
優 希:……。
ノッペ:辻居君。名前を教えて上げなよ。
辻 居:俺の名前?
ノッペ:そう。優希はそれを気にしてる。優希も辻居君に自分の名字を教えてないんだろ?
優 希:ええ。
辻 居:俺の名前は「辻居勇気」だよ。
優 希:え?私も「辻居優希」…。
辻 居:え?同姓同名?
ノッペ:(笑って)そう。
辻 居:なあ、ノッペリさん、どういうことなんだ?
ノッペ:簡単なことだよ。この世にはたくさんの世界が存在するんだよ。
辻 居:たくさんの世界?
ノッペ:そう。いろいろな条件によって変わってしまった世界。普段は絶対交わることのない世界。
優 希:パラレルワールド?
辻 居:パラソル?

    ノッペリさん、傘をくるりと回し、一度たたんだ後、辻居の前で突然開く。

辻 居:うわ。
ノッペ:平行世界とも言ったりするよね。平行線と同じで普段は絶対交わらない。でもこの辻道では少し傾きが変わったりすることがある。
辻 居:数学の話かよ。訳がわかんね。
ノッペ:ただし、線を傾けたままにすると、どんどん他の線と交わってしまう。世界が交わりすぎると混乱がおきる、だから、交わる時間はごくわずか。すぐに傾きは戻さなければならない。
優 希:ちょっと、待って。じゃあ、ひょっとして…。
ノッペ:わかった?
辻 居:何が?
優 希:もしかして、私と辻居君って?
ノッペ:そう。違う世界の同一人物。
辻 居:は?
優 希:どうして?
ノッペ:何が?
優 希:どうして、この世界なの?
ノッペ:君は自分の周りの状況が嫌なんだろ。だからさ、周りの状況が同じような感じなのに、頑張っている辻居君を見る必要があったんじゃないかな?
辻 居:全然わかんねーや。
優 希:でも、
ノッペ:男と女の違い。確かにあるかもしれないけど。大きな問題かね。周りに似たような性格の友だちがいて、その中でコミュニケーションの取り方が違うだけ何じゃない。
優 希:……。
ノッペ:ま、ついでに辻居君も他の世界を見てみたいとか言ってたから…。違う世界を見せた訳じゃないかもしれないけどね。
辻 居:驚いたよ。確かに。別人だけど別人じゃないんでしょ。
ノッペ:まあね。ま、別に私は正義の味方でも君の保護者でもないから。結果的にどうなるかは実はあんまり興味はないけど。そろそろ時間かな?

去ろうとするノッペリ

優 希:ねえ、ノッペリさん、これって…?夢?それとも?
ノッペ:(笑って)夢か、そうではないか?そんなこと?
優 希:どっちでもいいのか。わたしのとらえ方次第なんだよね。
ノッペ:(笑いながら)そうでしょ?
優 希:ノッペリさんありがとう、私、変われるかも知れない。
ノッペ:周りは何も変わらないからね、変わるか変わらないかは、
優 希:私、しだいかな?
辻 居:ねえ?
優 希:(笑って)え?

    辻居、写真を撮る。
    優希、笑いながら去る。

辻 居:ノッペリさん。
ノッペ:うん?
辻 居:ありがと。
ノッペ:何がだい?
辻 居:良い写真撮れたよ。
ノッペ:それは良かった。タイトルは?
辻 居:「昨日とは違う世界」

    優希の笑顔が写った写真が映し出される。

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